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秋雨
キスの練習とかやってた
「雨と劣情」の2人の番外編?
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今年は秋が早い。
記録的猛暑が続いたかと思うと、もう気が済んだとばかりに暑さがさっさとなりをひそめてしまった。
秋といえば、長雨。
ここ数日ずっと降っていた。
今日、何日かぶりに、太陽が顔を見せてくれた。
当番や部活で最近登下校共にすることが減ってきたアイツと、今日は久しぶりに一緒に下校している。
「はぁー、やっと秋らしい気持ちいい天気になったよね。今日は綺麗な夕焼けが見られそう。そうだ、あの丘行ってみない?」
そんなヤツの思いつきで、俺たちは昔からよく遊んだ近くの丘にやってきた。
ちょっとした広場のようで公園のようなそこは、すっかり寂れてしまって遊具にも手が入っておらず、人もほとんど見かけない。
「昔はもっといっぱい子どもがいたのにな」
西向きに設置されたベンチに腰を下ろし、通学かばんを地面に置いた。
「ほんとだね。わあ、いわし雲。秋だねえ」
俺は空ではなく、無邪気に空を見上げる隣の幼馴染の横顔に見惚れた。
幼馴染以上の感情を抱いたのはいつからだったか。
「うわっ?!」
快晴なのに、降ってきた。
「んもー、せっかく夕焼け見に来たのに」
ヤツはブツブツ文句を言いながら、俺と並んで少し離れたところにある遊具へ走り、潜り込んだ。
夕立特有の大粒の雨で、当たると痛いぐらいのそいつらは、この短時間ですっかり俺たちを濡らしてしまった。
ーーあっ、このシチュエーション。
思い出してしまう。
あの祭りの夜を。
土管状の迷路のようなところから、滑り台へと続く複合遊具は、今時珍しくコンクリート製で、もたれるとひやりと冷たい。制服が雨に濡れているので尚更だ。
昔はこの中を走り回っていたのが信じられない。今となっては身を縮めてなんとか入り込んでいるのがやっと。
ヤツがシャツのボタンを外し出したので、俺は飛び上がりそうになった。飛び上がれば頭を確実に強打する。
「は、何やって」
「これ着てたら余計寒くない?」
髪から雫を零し、真顔で脱ぎ始められてしまい、俺はどうすればいいのかわからない。
「お前も脱げば?寒くないの?」
確かに寒いけど。
「脱いだって、また濡れてるの着て帰るんだろ。一旦脱ぐ方が気持ち悪ぃよ」
「じゃ、こうしよ」
あいつがもともと近い距離をさらにぐいっと詰めてきて、おしくらまんじゅうしてるみたいに二人はくっついた。
「こうしてると、少しはあったかいよね」
満足そうな笑顔を見て、何も言えなくなる。
今日も、練習と称したあれやこれやをされるんだろうか。
ーーいや、してほしいと期待してるのは俺か。
トクトクと、ヤツの心臓の音まで伝わってくるのに、互いに黙ってじっとしたまま。
鼻先にちょうどヤツのつむじがあって、ついくんくんと嗅いでしまう。
「なにー?匂いかいだ?汗かいてんだからやめろよ」
少し呆れたように笑ってくる、可愛い幼馴染。
「少し小雨になってきたみたい」
言われて外を見ると、なるほど小降りになっている。
雨が止んだら、もう終わり。
こうやってくっついていることも、
コイツを独り占めしておくことも。
「上がったよ!」
考え込んでいるうちにヤツの体は俺から離れ、遊具から出ようとした。
俺はその腰に手を回して引き寄せた。
バランスを崩してヤツが俺の胡座の上にすとんと落ちてきた。
「なに?どうしたの?」
「練習、付き合ってよ。こないだの続き」
俺はヤツの桜色の唇に喰らいついた。
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