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意気地なし
#創作BLワンライ・ワンドロ
@BL_ONEhour
お題「ボタン」
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「いつでも返しに来てくれていいから」
あの人はそう言って、柔らかく微笑んだ。
翌日から僕は、その笑顔のように柔らかなタオルを毎日持っている。もちろんすぐにきちんと洗濯したけれど、まだあの人の香りが残っているような気がする。
あの大雨の日、ずぶ濡れになってマンションのエントランスに逃げ込んだ僕を見つめる瞳に、僕は、僕は——
今夜も、彼が住む四階ではなく、自室がある六階を押してしまった。
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