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第5話

ベッドの淵に二人並んで座り、去年は感じなかった違和感に気付く。 「なあ、身長伸びた?」 「おう、一年で7センチ近く」 去年は同じ目線だったのに、今では少し見上げるのが悔しくて。 それと同時に、自分の知らない宗真がいる事を寂しく思う。少し日に焼けたなとか、クラスではきっと人気者なんだろうなとか、女の子にもてるんだろうなとか。 「ったく、オレが知らない間に勝手に伸びんなよ」 今、上手く笑えただろうか? 誤魔化すみたいに自分から宗真の唇に掠めるように触れて、ぎゅっとしがみ付く。 抱き返してくれる暖かさに、胸の奥が痛くなった。 本当は、こんな事したいわけじゃない。二人でいられる短い時間なんだから、しっかり向き合って笑い合いたいのに。けど、こうやって抱きしめられて、嬉しいとか思ってしまう自分がいた。 「今日はさ、このままいれんだろ?」 「ん、いる」 ぎゅうと抱き付いた宗真の体は、去年よりも少し逞しく感じた。一年で7センチ伸びたとか鬼だ。 でも、こうして髪を撫でる仕草や聴こえる鼓動は、少しも変わらない。 「かき氷と、ブドウ飴食べたい」 「毎年それじゃん」 「いいんだよ、好きなもんはずーっと好きなの!」 今夜は楽しみにしていた夏祭りがある。いつもかき氷とブドウ飴を真っ先に買って、二人並んで食べるのが当たり前になっていた。 一年経っても何年経っても、好きなもんはずーっと好き。 改めてそう感じていた時、「お茶淹れたから降りてらっしゃーい」なんて呑気な声が聞こえてきた。 二人で顔を見合わせて、どちらからともなくお互いの唇に触れると、きゅっと手のひらを握って部屋を出る。 リビングのソファーには、母さんと宗真のおばさんがお喋りに花を咲かせているところだった。

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