携帯を耳と肩に挟みながらいつものスーツの袖に腕を通し終えると、李央(りお)は舌打ちをして通話を切断した。 「電話に出ろよ」 苛ついた顔でもう一度電話をかけると、次はワンコールで不機嫌そうな声が聞こえてきた。 「何の用だ」 「俺からの電話はすぐに出ろよ」 「無茶言うな」 不満を言いつつも、李央の口元は楽しそうに上がっている。 「今日は家にいるよな。今から行くから」 「今日は無理だ」 相手の即答にも迷うこと無く家を出て、外の通りまで行くとタクシーに乗り込んだ。運転手に行き先を伝えシートに体を預け、足を組んで鼻で笑った。 「俺も混ぜてよ」 「はぁ・・・ふざけるな」 「ふざけてないって。そいつ、帰すなよ」 電話向こうから感じ取った雰囲気に李央はニヤリと笑い呆れる電話相手に言い切ると、一方的に電話を切った。