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ドアを開けたらそこは……
「イテテテ……」
……なんだこれ。
急な腹痛と体が少しふわっとする感覚。
なんかの病気?どうしよう。病院行くべき?その前にとりあえずトイレ!
俺はトイレに駆け込む。
トイレに行くと何もしていないのに腹痛は収まった。
「はぁー……なんなんだよ。もういいや。宿題やろ」
トイレから出ようとしてドアを開けた。
「………………は?」
いやいやいや、待て待て待て、ここどこ?家にいたはずなんだけど?!
先程までトイレにいたはずなのに外に出ている。少しレトロで馬車が走っている。
トイレから出たよな、と思い後ろを振り返るがそこには正面と同じく風景があるのみ。
「嘘だろ……絶対これ平成じゃねぇ」
いつの時代だここは。俺はこんな所知らない。けど社会の教科書でこんなの見た気がするぞ。明治か?
「あのー、どうかしましたか?」
どうやって帰ろうか考え込んでいると前から来たらしい男の人に話しかけられた。
い、イケメンだ……。うぅ……心臓がバクバクしてるよぉ……あっ、ちげぇ、話しかけられてんだ俺。
「あぁ、まぁちょっと」
「もしかして違うところから来た?」
「えっ、な、なんでわかるんですか?!」
「服が変だし、靴履いてないし、僕の夢に出てきて……あれ?なんだっけ、たいむなんとかしたって」
「タイムスリップ……ですか?」
「あ〜そうそれ。してきたの?」
「う……はい……多分」
「そっかぁ」
夢に出てくるってすごくないか。しかもタイムスリップしたとか言っちゃってるんでしょ。正夢じゃね?
てか俺トイレから出たまんまだったから靴はいてねぇんだ。うわー靴下黒くなるやつじゃん。最悪。
「ねぇ、行くアテがないならうちにおいで。僕、1人で住んでるからさ」
「……いいんですか?」
「もちろん。ついておいで」
このイケメンさん優しすぎないか。
俺はイケメンさんに付いていく。
この間にも心臓は高鳴っている。
後で名前聞かなきゃな。お世話になるんだし。
イケメンさんに連れていかれた家は先程までいた場所から徒歩5分弱の場所にあった。
「ここだよ。入って」
「お、お邪魔します……」
広い。外側から見た感じは普通だったのに中に入ってみるとかなり広いことがわかる。
「まぁ座ってよ。色々話したいし聞きたいし」
「はぁ」
軽い人だな。
「僕は佐藤清。君の名前は?」
「あ、俺は坂爪健斗です」
清さん……名前もかっこいい。
「あの、俺……」
言葉が詰まってしまう。
「ゆっくりでいいよ」
「ありがとうございます……。俺、未来から来たんですよ。本当に突然。で、どうしようかと思っていたら清さんに助けていただいて。清さんがいなかったら俺きっと死んでました。ありがとうございます」
「いいんだよ、これくらい。それに健斗くんは夢に出てきたから運命だったのかなって」
「そんな……運命なんて……」
「僕は運命を信じるよ。それに健斗くんすごい可愛いしね」
「か、可愛い……だなんて……」
すごい嬉しい。もしこれが社交辞令だとしても嬉しい。
「顔赤いよ?大丈夫?」
「だ、大丈夫です!」
「ふふっ、良かった」
やばい……笑顔ちょーイケメン。元からイケメンだけど。俺もう死んでいいわ。
「ねぇ、ちょっと困らせちゃうような事言ってもいい?」
「ど、どうぞ」
困らせることってなんだろう。
「あのね、僕は健斗くんのことが好きだよ。夢に出てきた時からずぅっと」
これは自惚れていいのだろうか。
「あ、の……お、俺も清さんのこと好きです。さっき会ったばっかりだけど、でもすごい好きです。清さんに会ってからずっと心臓が煩くて、今もすごいバクバクしてるんですよ」
あー俺何言ってんだ。心臓のことまで言うつもりなかったのに。そもそも清さんが恋愛的な意味で好きとは限らない。それなのにこんな事言ったら清さん困っちゃうよな。
「ありがとう、健斗くん。健斗くんはさ、今きっと僕が恋愛的な意味で好きなわけじゃないだろうなって考えてるでしょう」
「…………はい……」
「でもね、違うよ。僕は健斗くんのことがそういう意味で好きなの。最初に“困らせちゃうような事”って言ったでしょう?こういうことなんだよ」
この好意はすごい嬉しい。けどもしかしたら俺は平成に戻るかもしれない。そんな人と恋愛なんてしていいのだろうか。清さんにとって俺は迷惑な存在にならないだろうか。
「健斗くん後ろ向きなこと考えてるでしょ。僕は迷惑なんて思わない。絶対に。もし、健斗くんが元の世界に戻っても」
俺の目が潤んでいく。
「だからさ、健斗くん、元の世界に戻るまででいい。戻ってからは僕とは別な好きな人を作っていいから、僕と付き合ってください」
「よ、よろしく……お願いします……」
ついに俺の目から涙が溢れた。
溢れ出した涙は止まることを知らず次々に出てくる。
俺は泣きながら喋る。
「清さん……俺、もし、元の世界に戻っても……絶対に恋人なんて作りませんから……」
「そっかぁ。じゃあ僕もいくら寂しくても作らないね。約束」
「ぅっ……はい……!」
明治に来た時は早く平成に帰りたいって思っていたのに今はもう帰りたくない。
こうなったのは清さんに出会ってしまったから。
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