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第275話
『希望(キボウ)』
願い。望み。
好ましい事物の実現を望むこと。
未来が明るいと感じる気持ち。
そうか・・・。
そうだ。
俺はずっと、陽向の苦痛を和らげ、抱える問題を取り除いてやりたいと思ってきた。
だが今、はっきりと認識した。
俺はそれ以上に、陽向に『希望』を取り戻させてやりたいと願っていたのだ。
そして、陽向はもうちゃんと『それ』を手にしている。
それに気づいた時、不覚にも涙が零れた。
「征治さん、どうしたの!?」
陽向が驚いて顔を覗き込む。
俺は黙って陽向を抱き寄せた。
「えっ、征治さん、ここ外だよ!?」
益々慌てた様子で小声で叫ぶ陽向を、もっと強く抱き締める。
視界の端で僅かに水平線に残っていた陽が静かに沈んでいった。
きっとすぐに夜の帳 が下りて、俺たちの姿を優しく包んでくれることだろう。
< 第一部 完 >
☆次ページにあとがきもどきと、期間限定ショートストーリーのお知らせ、第2部のご案内を載せております。ぜひご覧くださいm(__)m
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