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第1章第94話
「お前やる気ある?」
いつも以上に冷たい口調。
「あ、あります…………」
「そうに見えないんだけど」
うっ────だってどうすりゃいいんだよ。
「まあま逢坂さん、緊張してるだよね」
広瀬さんが堪らず間に入る。
仕事ではさん付けなのか……。
俺はこくりと頷く。
「緊張ね────それ言い訳に
撮影が進まないのは困るんだよな」
明らかに逢坂は呆れた表情を浮かべてる。
どうすれば────とその時、
「大和っ」
「へ?」
俺に飛びついてきたのは暁。
一週間ぶりに見る暁に俺の胸は
緊張感とは違う胸の高鳴りを与える。
「あ、暁」
「へへ、来たよ!ごめんね連絡出来なくて」
俺はブンブン首を振り
抱きしめたい衝動に駆られる。
「暁、今撮影だよ分かってる?」
暁に対しても少し冷たい逢坂。
暁は上手く行ってないの?と訊いて
俺の耳元に顔を寄せた。
「大丈夫……大和、僕を考えて?」
「え…………」
「カメラじゃなくて僕だけを思い浮かべて」
暁は俺にしか聞こえないように
それだけを言って離れた。
暁だけ────。
意味は分からなかったけど
俺は再度カメラの前に立ち目を閉じた。
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