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第1章第1話

大和side 「んっ……ぁ……ん」 誰もいない部屋に荒い息遣いと 微かな喘ぎが響く。 自らの手で自分を擦り上げるのは もう何度目か……。 「んっ……ぁっ……んっん」 声を抑えてるつもりだが、 既に自分の弱いところは 知り尽くしてる。 先端を指の腹で擦り 猛ったペニスを上下に 扱くと蜜が溢れ出した。 「あっ……ん……や……ばい」 射精感が強まれば 自然と手が早まり クチュクチュやらしい 音が自らを煽る。 「あっ……ぁっ……ぁっ……イくっ」 びくんと身体が反応したと 同時に手の中にぶちまけた。 荒い息だけが残り、 ティッシュで吐き出した ものを拭き取ると 虚しだけが残る。 なんで俺がこんな事してるかって? それは────、 ある日、街中に現われた巨大看板……。 そこに写しだされた姿が俺を こんな風にさせてる。 俺の名前は九条大和(くじょうやまと)18歳。 毎日退屈な日々を過ごしていた。 誰にも本気になれなくて 相手は取っかえ引っ変え。 言わば遊び人。ところがある日 目の前に飛び込んで いた一枚の看板に俺は心奪われた。 「はぁ……」 溜息混じりにベッドに横たわる。 目を瞑りその姿を思い描く。 栗色の長い髪…… 均等の取れた顔立ち、 誰が見ても美人だと 評価するだろうその美貌。 何より印象的なのはその瞳……。 その輝きは綺麗な碧色をしていた。 知っているのは雑誌を読み漁って 調べAKI(あき)と言う名前だけ。 年齢もなにも掲載されていない 謎だらけな少女。 頭の中で何度も彼女を抱き 1人で行為に及ぶ。 はっきり言って重症だ。 彼女が現れてから遊びも辞めた。 周りからはどうした?熱あるのか? と心配されるが まさか看板に惚れたなどと 言えるはずもない。 「AKI……」 その名前をもう何度口にしたか。 会いたい、ただそれだけ。 けれど相手は俺とは住む世界が違う。 このまま一生会えないのか……。 「はぁ……」 こんな退屈な毎日……もう嫌だ。 あの子が俺を連れ出してくれる。 会えさえすればきっと変わる。 「AKI……」 愛おしい……。この時、 俺は大変な誤解をしていた…。 そうあの日まで…。

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