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第1章第5話
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「……と、君……大和君」
広瀬さんの呼ぶ声でハッとする…。
あれ……俺はどうしたんだっけ?
「大丈夫?」
目の前にある顔を見つめ
思考が回復する。
あ……そうか……AKIの話し…。
と、言うかAKIが男と言われ
数分全く何も考えられれなかった。
だって男だぞ!俺が初めて
本気になれた相手がまさかの男……。
そんなの信じられない、
信じたくない。
「大和君……?」
何故、何故俺に話した?
そんな大事な事なぜ俺に……。
ヤバイなんだか泣きそうだ。
あまりのショックに
俺はパニックに陥っている。
そんな俺を察したのか、
「今日は……これ以上やめておこう」
広瀬さんは冷静な口調で話を続ける。
「何があったら名刺の番号に
連絡して?待ってるから」
連絡……事実を知って
これ以上何を話すのか?
そう思ったが
言葉にする事は出来なかった。
広瀬さんは仕事なあるからと、
少し心配な顔をしながらも店を出た。
俺は暫くの間その場から動けず
帰宅したのは夕方だった。
買ったばかりの雑誌も目を通さず
俺はベッドへ直行。
いつもならドキドキしながら
新しいAKIを眺めていたのに。
とてもその気になれない。
俺の両親は父親の仕事の都合で
1年前からアメリカに住んでいる。
俺が残りたいと言い出したから、
母は悩んだが
結局父親について一緒に渡米した。
俺1人では実家は広すぎると
親が俺の為にアパートを借り今に至る。
だから1人Hも好き放題出来たわけだ。
でも……。
「あ……き……が……男…」
天井を仰ぎながら口にした。
目を瞑ると綺麗に笑うAKIの顔が
浮かんで消えた。
まだ信じられない……。
あんな綺麗な子が男だなんて。
胸がチクリ。男…………?あれ?
何か忘れているような。
男??記憶を手繰り寄せ振り返る。
思考が繋がった瞬間
俺はベッドから飛び起き
部屋にある雑誌を片っ端から
見直し僅かに残る記憶と照合する。
「まさか……」
そう約1ヶ月前本屋の
帰りに俺とぶつかった子!
男だからと記憶から排除していたが
確かに彼の顔はAKIそのものだった。
よくよく考えればこの世にあの顔が
2つもある筈がない。
雑誌が俺の手から落ち
バサッと床に落ちる。
そう俺は会っていた。
本物のAKIに……。
何故気付かなった?男だったから?
瞳の色が違うから?あれがAKIなら
広瀬さんは会ったばかりの俺に
事実を話した事になる。
何故?そこが分からない。どうして?
「何かあったら
名刺の番号に連絡して?」
広瀬さんの言葉を思い出し
ポケットを漁る、確か……。
左のポッケから丸めた名刺を出す。
ついもう用がないからと
丸めて突っ込んだ。
捨てなかったのが幸い。
俺は名刺の番号に電話をする。
だが、何度呼び出し音が
鳴っても出る気配がない。
「……駄目か」
俺が最も苦手なのが男……。
だからいつも女といたし
友だと呼べる男友達もいない。
女に困った事が無かったから余計だ。
まさか本気になった相手が男だと
そんな日が来るとは夢にも思わなかった。
だけど……スマホ置き
落とした雑誌を取りAKIの顔を見つめる。
「あ……き……」
自然と名前を口にした。
ずっと会いたいと願っていた。
来る日も来る日も飽きもせず
雑誌のAKIをニコニコ
眺めそれじゃ飽き足らず
頭の中で何度も抱いた
それほど恋焦がれた相手……。
俺は……どうしたい?
事実を知ってそれでも俺は……。
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