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第1章第20話

「不思議?」 広瀬さんが俺に視線を向けそう言った。 「モデルはね基本的には笑わないんだ」 「え?」 「雑誌見て気づかなかった?」 あ、そう言えば 笑っている顔は少ないかも。 「勿論たまには笑顔も入るけど 基本は決め顔だな」 決め顔……。そう言われても 今の俺にはしっくりこないが AKIが作る表情にまた視線が奪われる。 俺はずっと見とれたまま 撮影は順調に進み 衣装もフェミニンやら ちょっと大人な感じなシックな衣装まで AKIは見事に着回した。 「あの子はプロだよ」 広瀬さんの言葉に少し不安になった。 俺に同じことが出来るだろうか? AKI目当てに引き受けてしまったけれど……。 俺の表情が少し曇る。 「大丈夫だよ、君なら出来るさ」 不安を察したのか 広瀬さんはポツリ呟いた。 そうだ俺は決めたんだ。 AKIの側にいるって。 その為なら────何だってやってやる。 「AKIちゃんお疲れ様」 カメラマンの声に 自分の世界から引き戻される。 どうやら撮影は終わったようだ。 またAKIに笑顔が戻り 一礼してこちらに歩いてきた。 何から話そう……あ~駄目だ また緊張してきた。

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