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第1章第31話
「ここは僕が払う」
「でも……」
「いいの、僕は仕事してるだし
食べた量は僕のが多いんだから」
大和は申し訳なさそうな顔をし
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
そう言って頭を下げた。
ちょっと照れくさそうな仕草。
やっぱり反応可愛い。
僕達は会計する為にレジに向かうと
小さな子供が店内を走り回り
目の前で勢いよく転んだ。
「あ…………」
まだ3歳くらいだろうか……。
うわ~と泣き出し中々起き上がらない。
「大丈夫?」
僕が駆け寄ろうとする前に、
そう言って小さな子供を
起き上がらせたのは大和。
「ほらもう泣かない男の子だろ?」
服の汚れを払い大和が優しい笑顔で
小さな頭を撫でると
子供はピタリと泣き止んだ。
トクン………僕の胸が高鳴る。
「すいません、有難うございます」
母親だろう。慌てた様子で若い女性が
大和に駆け寄り深々と頭を下げた。
「いいえ、まだ小さいから
気を付けて下さい」
母親は何度も頭を下げ
泣き止んだ子供を連れ席に戻る。
ほんの一瞬の出来事。
「ごめんね?行こうか……」
大和は何事も無かったかのように
ニッコリ微笑む。
ドクン────あ、また……。
だってね、当たり前のように見えるけど
さり気なくあれが出来る人は少ない。
不器用そうなのにそれが出来るって
やっぱり格好良いと思うから。
僕の胸は高鳴ったまま────。
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