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温泉旅行 2☆

お湯の中で恋人つなぎで手をつないだままでぽつぽつと話をしているうちに、いいかげん熱くなってきてしまったので、お風呂を出ることにした。 脱衣所に戻ってバスタオルで体を拭き、パンツを履こうと新品のトランクスを手に取ると、横からすっと手が伸びてきてトランクスを取り上げられてしまった。 「ちょっ、先輩、パンツ返してくださいよ」 僕が先輩のいたずらに抗議すると、先輩はにやっと笑った。 「パンツは必要ないだろ?  和服の時は下着はつけないものだぞ」 「えっ……。  ってそれ、女の人の話ですよね?!  だいたい和服って言っても、旅館の浴衣だし! ぺらぺらだし!」 旅館の浴衣は濃い水色なので透けて見えるようなことはないだろうが、さすがにノーパンはまずいと思う。 「まあ、いいじゃん。  俺もつきあって履かないでおいてやるからさ」 「そういう問題じゃありませんよ!」 二人でノーパンになったら大丈夫などというはずがなく、むしろ人にバレるリスクが二倍になるだけだ。 僕はなんとか先輩に思いとどまってもらおうとしたが、先輩はさっさと僕のパンツと自分のパンツを旅館のビニール巾着の中にしまってしまった。 こういう時の先輩の強引さは漫画の再現の時にすでに体験済みで、やめさせるのは難しいとわかっている。 僕は仕方なく諦めて、下着を履かずに浴衣と丹前を着ることにする。 ドライヤーで髪を乾かしてから、二人そろって大浴場を出た。 僕はノーパンが気になるので早く部屋に帰りたかったのだが、先輩が「せっかくだから旅館の中を見て回ろうぜ」と言い出して、旅館の中をうろうろするはめになってしまった。 休憩所に置いてあるマンガをめくったり、売店でお土産を物色したり、懐かしい感じのゲームコーナーをのぞいたりしている間も、僕はそわそわとして落ち着かなかった。 何も履いていない下半身がスースーするし、なんというか、ぶらぶらしているのが気になってしまって仕方がない。 こんな状態で平気な顔をしている先輩が、正直信じられない。 先輩にさんざん連れ回された後、ようやく部屋に戻ってきた僕は、ぐったりと窓際に置かれた応接セットの低い椅子に座り込んだ。 するとちょうどその時、部屋の電話が鳴った。 近くにいた先輩が受話器を取り、「はい、お願いします」と答えてすぐに受話器を置く。 「夕食、もう持ってきてもらってもよかったよな?」 「あ、はい」 お風呂に入った後、うろうろと歩いていたので、お腹はいい具合にすいている。 現金なものでご飯と聞くと元気が出てきて、僕は椅子から立ち上がって座卓へと移動する。 しばらく待っていると外から「失礼します」と声がかけられ、仲居さんが夕食を運んできてくれた。 「おー、うまそー」 「すごーい!」 次々と並べられる料理に、僕たちは歓声を上げる。 山の温泉地なので、キノコや野菜や川魚などヘルシーな食材がメインだが、豚肉が入った小さな鍋もあってボリュームは十分だ。 「ご飯多めにしておきましたけど、足りなかったらおかわりしてくださいね。  お食事終わりましたら、片付けとお布団敷きにまいりますから、フロントに内線お願いします」 はしゃいでいる僕たちを微笑ましそうに見ながら説明してくれた仲居さんに礼を言うと、仲居さんは「ごゆっくり」と言って部屋を出て行った。 「ご飯よそいますね」 「おー、頼む」 二人ともお酒に出す金があったら趣味か食べ物に使うというタイプなのでお酒は頼まなかったので、さっそくご飯のおひつを開ける。 ほかほかと湯気を上げるご飯はキノコたっぷりの味ご飯で、これもまた美味しそうだ。 「いただきます」 二つの茶碗にご飯を山盛りにすると、僕たちは手を合わせて並べられた料理を食べ始めた。 料理は特にこったものではないけれど、どれも新鮮で出来たて熱々でおいしいくて、僕らは夢中になって食べ続けた。 ご飯のおひつを空にし、机の上の料理も残りはデザートのみかんだけという状態にして、僕たちは満足のため息をついた。 「うまかったな」 「ほんとですね。  さすがにもうお腹いっぱいです」 「そうだな。ちょっと一服するか」 そう言うと先輩は、まるでこたつに入るみたいに体を座卓の下に入れる形でごろりと横になった。 「先輩、わざわざそんな狭いところで寝転がらなくても。  寝るんだったら布団敷いてもらいますか?」 「んー、もうちょっと後でな」 先輩はそう答えると、ずりっと体を座卓の奥へと移動させた。 なんでわざわざまた狭いところにと思っていると、あぐらをかいていた僕の足に先輩の足がこつんと当たった。 「ひゃっ!」 先輩の足は僕の足のあぐらを乗り越えて、まっすぐに股間をめがけてきた。 その途端に、僕は食事に夢中になって忘れかけていたノーパン状態のことを思い出す。 「せ、先輩だめ……、浴衣、汚しちゃ…ぅ……」 「なんだよ、ほんのちょっと触っただけだろ?  それともお前、触られる前からやばかったりするの?  ノーパンで興奮してた?」 「やっ……、ちが…」 違うのだ。 本当にさっきのさっきまで、ご飯に夢中でノーパンのことなんか忘れていた。 けれども、先輩の足で浴衣越しにちょっと触られただけで、僕のものはあっという間に勃ち上がってしまっていて、僕の否定の言葉はまったく説得力を持たない。 「先輩!」 本格的にまずい状態になってきてしまってからようやく、僕は座椅子ごと後ろにずずっと下がって先輩の足から逃れると、抗議の声を上げた。 机の下から這い出て座り直した先輩を、僕は抗議の眼差しでにらみつける。 「お前、そんな色っぽい目して……。  このまま、するか?」 にらみつけたつもりの僕の眼差しには、どうやらまったく迫力がなかったらしい。 確かに、ちょっとだけそんな気はしていたのだ。 口では一応抗議をしたものの、ノーパン状態の股間を先輩に足先で触られて、そのシチュエーションと刺激に興奮している僕がどんな目をしていたかは、自分でもなんとなく想像がつく。 「その……、布団敷いてもらってからで……」 僕がうつむき加減でそう言うと、先輩は「そうだな」とうなずいた。 「途中で邪魔されたら困るもんな。  じゃ、先に片付けてもらおうな」 そう言うと先輩は、電話の受話器を取ってフロントに電話をかけた。

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