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温泉旅行 1☆

※二人がつきあい始めた直後の話です。 ────────────────── 「つきあい始めた記念に、旅行でも行くか」 先輩がそう言い出して、二人で相談した結果、一泊で温泉に行くことになった。 とはいえ、予算とバイトの都合で土日で出掛けるのは難しかったので、日曜日の朝に出発して月曜の2コマ目の授業には間に合うように帰ってくるという強行軍スケジュールだ。 それでも先輩と初めて旅行に行けるのが楽しみで、僕は何日も前から荷物を準備したり新しいパンツを買ったりして(ちなみにセクシーなやつではなく、あくまでごく普通のだ)そわそわしていた。 旅行当日は快晴だった。 先輩と駅で待ち合わせて、そのまま電車に乗る。 特急に乗り換えて1時間半ほどの距離だったが、先輩とお菓子を食べながら萌え語りをしていたらあっという間についてしまった。 メインの目的は温泉なのだが、せっかくだから観光もしようということで、温泉街の近くにある彫刻の屋外展示に力を入れている美術館へと向かう。 今まで立体造形はフィギュアくらいにしか興味がなかったけれども、芸術的な彫刻を見るのは意外なほどに面白かった。 まあそれもたぶん、先輩と一緒に感想を言い合ったり作品を茶化したりするのが楽しかったからで、僕一人や他の人と来てもこれほどは楽しめなかっただろうなと思う。 昼食をはさんで時間をかけてゆっくりと美術館を見た後、温泉街で土産物屋をひやかしたり、できたての温泉まんじゅうを食べたりとぶらぶらとして時間をつぶし、チェックイン出来る時間になるのを待って旅館に向かった。 ネットで予約した旅館は、外観はちょっと古びたビルだったけれど、中は掃除が行き届いていて、けっこうよさそうな雰囲気だ。 部屋まで案内してくれた仲居さんによれば、今の時期は夏休みが終わり紅葉が始まる前の中途半端なシーズンなので比較的すいているらしい。 いかにも温泉旅館という感じの普通の和室に案内され、説明を終えた仲居さんが出て行くと、さっそく先輩が「夕飯の前に風呂行くか?」と言いだした。 着いた早々ではあるが、僕も温泉を一番楽しみにしていたので「はい!」と答える。 二人とも旅館の浴衣に着替え、替えの下着とタオルを持って部屋を出た。 大浴場に向かって歩きながら、僕は隣を歩く先輩の浴衣姿にどきどきしていた。 いつもと違う服装というだけでも新鮮なのに、浴衣の襟元からちらっと見えている胸筋や、歩くたびに裾がはだけて見える足元から色気が匂い立つようでくらくらする。 先輩の肌は全裸だって何回も見てるのだから、今更それくらいがなんだという気はするが、チラ見えというのは全裸とはまた違う魅力があるらしい。 まだ風呂に入ってもいないのに若干のぼせたようになっていると、先輩がぼそっと「浴衣の高橋がかわいい」とつぶやいて、僕はさらにのぼせてしまった。 大浴場につくと、まだ早い時間ということもあって、他にお客さんはいなかった。 「おー、俺たちだけだな。  これは温泉エッチし放題だな」 「ちょっ、先輩やめてくださいよ。  いつ人が入ってくるかもわからないのに」 さっそく浴衣を脱ぎながらの先輩の言葉に僕が慌ててツッコミを入れると、先輩は「だよなぁ」とひどく残念そうに言った。 「けど、せっかく二人で風呂入るんだし、背中の洗いっこくらいはいいだろ?」 「あ、はい。それくらいなら」 「よし。  じゃあ、先行ってるから、高橋も早く来いよ」 さっさと全裸になった先輩が先に行ってしまったので、僕も慌てて浴衣と下着を脱いでタオルで前を隠しつつ先輩の後を追う。 大浴場に入ると、先輩はすでに洗い場の椅子の一つに座っていた。 「おー、こっちこっち。さっそく洗ってやるから」 「はーい」 先輩にうながされて、洗い場の一番端に座って先輩に背中を向けた。 鼻歌でも歌い出しそうなごきげんな口調で「流すぞー」と言った先輩にシャワーでお湯をかけられ、ボディーソープを付けたタオルで背中をごしごしと洗われる。 こんなふうに人に背中を洗ってもらうのなんて子供の時以来で、なんとなく落ち着かなくて――しかも洗ってくれているのが大好きな先輩なのだからなおさらだ――僕が若干もぞもぞしていると、いきなり先輩の両手が僕の脇の下からにゅっと出てきた。 「せ、先輩、背中の洗いっこだって……」 「いや、ついでだし前も洗ってやるよ」 そんなとぼけたことを言いながら、先輩は泡だらけの手で僕の乳首をきゅっとつまんだ。 だいたい、タオルを持っていない時点で、先輩が僕をただ洗うつもりじゃないことはバレバレだ。 「あっ、だめ………んぅ……」 口では駄目と言いつつも、先輩に開発されまくった僕の乳首は、あっという間に固くなって快感を拾ってしまう。 「高橋、声は我慢しろよ。  もし他の人が入ってきたら困るだろ?」 先輩の言葉に、僕はどきっとする。 確かに、大浴場でこんないやらしいことをしているところを知らない人に見つかってしまったら、まずいことになる。 僕は慌てて口をぎゅっと閉じて声を押し殺した。 それでも口の端から荒い息がもれるのは止められない。 それに――僕の体を知り尽くしている先輩に乳首をいじられて、股間のものは半勃ちになってきていて、タオルの上からでもそれがわかるくらいになってしまっている。 「せ、先輩……、僕、もう、やば……」 涙目になりつつ、僕が先輩に限界を訴えかけたところで、後ろでガラッと戸が開く音がした。 「っっ!!」 僕がびくっと飛び上がると同時に、先輩の手はさっと僕の背中に戻り、再びタオルで背中を擦りだした。 僕の方も内心はびくびくしながら、さりげないふうを装って前を隠しているタオルの位置を直す。 幸い、入って来た人は、僕たちとは逆の端の洗い場に座ったらしく、離れたところで水音がし始めた。 僕がほっと胸をなで下ろしていると、僕の背中を洗ってくれていた先輩の手が止まった。 「よし、終わり。  じゃあ交代な」 「あ、はい」 反射的に返事をしてしまったが、僕の股間のモノはまだ反応したままだ。 仕方なく前を押さえながら体の向きを変えると、先輩はにやにやと笑いつつ、自分が使っていたタオルを渡してくれた。 ちなみに言うと、先輩の立派なモノの方はさすがに反応していない。 「じゃあ洗いますねー」 「おう」 先輩から受け取ったタオルで、今度は僕が先輩の背中を洗う。 先輩の背中は僕よりも大きくて、肩の辺りの筋肉が盛り上がっていてたくましい。 こんなふうに先輩の背中をじっくり眺めつつ触るのは初めてで、ちょっとどきどきしてしまったが、それでも洗うことに集中していると、さすがに股間の方も落ち着いてきた。 「こんなもんでいいぞ。  ありがとな、なかなか気持ちよかった」 そう言って振り返った先輩は、リラックスした様子で微笑んでいた。 「あ、はい。  僕もありがとうございました」 そう言いつつ先輩にタオルを返すと、先輩は蛇口の方に向き直って体の前を洗い始めた。 僕ももう股間のタオルを取っても大丈夫な状態に戻ったので、タオルを取ってボディーソープをつけて自分の体を洗う。 先輩とほとんど同時に体と頭を洗い終えると、「露天風呂の方に行ってみようぜ」と誘われたので、立ち上がって先輩について行った。 後から入って来た人はすでに内風呂につかっていたので、その人から離れるために、先輩は露天風呂を選んだようだ。 露天風呂と言ってもビルの中なので、周りは壁に囲まれていて景色は見えないが、それでも雰囲気は十分味わえる。 「あー、さすがに温泉だけあって気持ちいいな」 「そうですね」 泉質とか難しいことはよくわからないが、普通のお風呂よりもぬるっとしていて、なんとなく体があったまるような気がする。 「しかし出来なくて残念だったな。  温泉エッチ」 先輩がいきなりそんなことを言い出したので、僕はブッと吹き出してしまった。 「だから、しませんって……!」 「そんなこと言って、高橋も結構その気になってたくせに」 そう言いながら、先輩はにやにやといやらしい笑みを浮かべている。 先輩の言葉通り、さっきその気になりかけた時のことを思い出し、僕は顔を赤らめる。 「ま、ここじゃまずいのは確かだし、続きは部屋に帰ってからな。  とりあえず今は、これくらいで我慢しとけ」 そう言うと、先輩はお湯の中で僕の手をきゅっと握ってくれた。 「……はい、我慢します」 僕がお返しのように先輩の手をきゅっと握り返すと、先輩は「おう」と答えてかすかに微笑んだ。

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