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オカズへのこだわり(過去話、攻め単体)☆
男なら誰しも、オカズには自分なりのこだわりというものがある。
俺の場合、三次元の女に興味が無いこともあって、オカズは二次元、しかもマンガと決めている。
俺のように同人活動をしているやつは、自ジャンルの同人エロマンガをおかずにする場合が多いと思うが、残念なことに俺は自ジャンルへの愛が深すぎてエロ妄想が出来ないタイプだ。
だから俺は、好きだけど自分で描くほどではないジャンルの同人誌やオリジナル(商業同人問わず)をオカズに使うことが多かった。
今日のオカズ(予定)は、買って来たばかりの成人向け商業誌だ。
まだ読んでなくて抜きどころがあるかどうか分からないので一応オカズ(予定)とはなっているが、実際のところは使う気満々である。
パラパラとめくってみて、とりあえず目に付いた女子高生ものを読み始める。
女子高生に特に思い入れがあるというわけではないが、やはりセーラー服は男のロマンだ。
読み始めてみると、エロではあるが結構きちんとしたストーリーがあるようだ。
抜き目的のマンガにストーリーなんかいらないというやつも多いが、俺は自分がストーリー重視のものを描くことが多いこともあって、エロマンガもストーリーがある方が好きだ。
これは結構当たりかなと思いつつ、しっかり反応してきたモノを出すべくズボンとパンツを下げかけていたが、次のページをめくったところで俺の手は止まってしまった。
「これはないわ……」
開いたページには、セーラー服をはだけられて下着を切り裂かれた女子高生が、全身をロープで緊縛された姿が大ゴマで描かれている。
だがしかし、残念なことにその手足は、明らかに関節ではない、あり得ない位置で曲がっていた。
確かにエロい絵ではある。
だがいくらエロくても、人体として成立していない絵は論外だ。
おかげでさっきまで反応しかけていた股間のモノも、すっかり萎えてしまった。
「だいたいこれ、ロープの位置もおかしいだろう……」
下ろしかけていたズボンとパンツを上げながら、俺は机の上に置いてあるデッサン人形を取って、ロープの代わりに輪ゴムを使って、マンガと同じように縄化粧をほどこしてみる。
「うん、やっぱりこうなるよな」
デッサン人形でロープの位置を確認した俺は、いつもネームや落書きに使っている無地のノートと鉛筆を出して、マンガの緊縛シーンを自分の絵で描き直し始めた。
「どうせなら、顔も変えとくか」
体を自分が納得いく形で書き終えると、せっかくだから顔ももっと自分好みにしたくなってきた。
とはいえ、俺は自分でキャラクターを生み出すということが出来ないので、いつも自分の同人誌にオリジナルキャラを出す時と同じように、実在の人物をモデルにすることにする。
芸能人、同級生、マンガサークルの子とセーラー服が似合いそうな女の子を順番に思い浮かべてみると、どういうわけか、その中に一人だけ男が混じっていた。
「いやいや、高橋は男だから」
サークルの後輩である高橋は、確かに男にしてはかわいい顔をしているし、セーラー服を着せたら似合いそうではある。
けれどもいくらかわいくても、男である高橋をモデルにしてエロ絵は描けないし、オカズにもならない。
そう考えて、いったんは高橋を頭の中から追い出して他の女の子を思い浮かべてみたものの、なぜかまた頭の中に高橋の顔が繰り返し浮かんできてしまう。
気が付くと俺の手は、セーラー服の女子高生の体の上に、高橋の顔を描いていた。
それだけでは飽き足らず、仕上がっていた体も一部消して、膨らんだ胸を平らにし、股間にイチモツを描き足して男の体に描きかえる。
仕上がった絵は、元のセーラー服の女子高生とはかけ離れた、女装した男の緊縛絵だ。
だがどういうわけか、俺の目にはその絵が、女子高生の絵なんかよりも何百倍もエロいものに見えた。
気付けば、完全に萎えていたはずの俺のモノは、また反応しはじめていた。
再びズボンとパンツを下ろしてソレを握りしめながら、俺は自然と、高橋があの大きな目を潤ませて俺を見つめる姿を、いつも楽しそうに俺に話しかける時とは違う色っぽくかすれた声で「先輩……」と呼ぶのを想像していた。
結局俺は、自分が描いた高橋のエロ絵をオカズにしてイッてしまった。
男の生理で、普段なら達してしまえば熱が冷めて冷静になる。
けれども今日の俺は、達した後も熱に浮かされたままだった。
手早く後始末を済ませると、ノートの新しいページを開く。
頭の中では、自分でも恐ろしいくらいの勢いで、セーラー服で女装した高橋を緊縛してエロいことをするストーリーが展開している。
とにかく今は、この頭の中の妄想を形にしなければ収まりそうにない。
俺は何かにとりつかれたかのような凄まじい勢いで、ノートにネームを切り始めた。
ネームを切り、そのままPCを立ち上げて下書きを終える頃には夜が明け始めていた。
出来上がった下書きを最初から見直しながら、俺の手はまた股間のモノに伸びていた。
そうしてマンガの中の『先輩』が対面座位で繋がった高橋の中で達するのと同時に、再び俺は達していた。
「ちょっと待て……うそだろう……」
一晩かけてマンガを描き、それをオカズにしてイッて、そこでようやく俺に賢者タイムが訪れた。
しょっちゅう顔を合わせている男の後輩をモデルにしてエロマンガを描き、しかもそれをオカズにしてしまったという事態の異常さをようやく実感し、俺は青ざめる。
確かに高橋はかわいい、それは事実だ。
顔はもちろんのこと、大きな瞳をきらきらさせて萌えを語る様子は微笑ましくてかわいいし、俺が描くマンガを気に入ってくれて「先輩、先輩」と慕ってくれるのもかわいくてたまらない。
けれどもそれは別に変な意味ではなく、ただ単純に後輩としてかわいいというだけの話だ。
「……だよな?」
それなのに改めて確認すると、ちょっと自信がなくなってしまう。
普段は二次元とはいえ女の裸をオカズにしている以上、俺は別にゲイでもなんでもないはずだ。
それなのに、高橋のことをこれまで本当に一度も性的な目で見たことがないかと自分に問いかけてみると、はっきり「ない」とは言い切れない気がする。
「……とりあえず、寝よう」
混乱した俺は、考えることを放棄した。
明日――というか今日も1コマ目から授業がある。
あと1、2時間しか寝られないが、徹夜で授業を受けるよりはましだ。
達したばかりで疲れていたこともあって、俺はすぐに眠ってしまった。
夢の中で誰かに「先輩」と呼ばれた気もするけれど、きっと気のせいだ。
――――――――――
その後俺は、下書きしか出来てなかったマンガを仕上げ、またオカズにしてしまった。
しばらくはその事実に落ち込んでいたが、しばらくしてから、今度は男の姿のままの高橋と『先輩』との初エッチマンガを描いてしまい、ようやく高橋をかわいいと思う気持ちが恋愛感情だと認められるようになった。
そうして開き直った俺は、高橋と自分をモデルにしたエロマンガを何作も描き、それをオカズにして抜きまくった。
しかしまさかそれが当の高橋本人に見つかり、あんなことになるとは、さすがの俺でも妄想すら出来なかったのである。
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※お知らせ
元々はこの後に「ハロウィン」の回を掲載していましたが、現在はコンテストに応募中のため取り下げております。
ご不便をおかけしてすみません。
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