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あの日から 10

「洋…この人誰だ?」 安志に聞かれて焦るし、なんで丈が改札まで迎えに来ているのか…その真意が掴めず、心臓がバクバクしてくる。 「えっ!あっ…会社の先輩で寮も一緒の…じょ…張矢さんっていうんだ」 「張矢さん、何でここに?」 「…いや、たまたま見かけたから…」 丈は不愛想に答える。 もしかして怒ってる? 心配になってくる。 「ふーん、あっ俺、洋の幼馴染の安志です。よろしく。洋がお世話になっています。」 なんて安志が変な挨拶するから、ますますおかしなことになりそうで、冷や汗が出てくるじゃないか。 「そう…よろしく。じゃあ私は先に帰るから」 丈はくるりと背を向けてスタスタ歩いて行ってしまった。 振り返りもせずに去っていく。丈の背中がどんどん小さくなっていくのに不安が募る。 丈っ待って!待てよ! 俺は心の中でそう叫んでいた。 「安志!またな!」 「おっおい!洋?待てよ」 だが慌てて丈の背中を追いかけようとする俺の手首を、安志に掴まれて阻止されてしまう。 「なっ!何?」 丈が行ってしまうじゃないか! 「洋…あの人は大丈夫か?お前に変な事しないか?」 心配そうに安志がそんなこと聞くから、びっくりして顔がかぁっと赤くなるのが分かる。 「なっ…何言ってるんだよ!」 変な事どころか、毎晩のように抱かれているとは、死んでも言えない。 しかも俺の方からそれを望んだなんて、絶対に安志には言えない。 「…ごめん安志。俺先輩と帰るから…また連絡するから」 手を振りほどき駆け出そうとすると、後ろからぎゅっと抱きしめられた。 「や…安志!ちょっ!ちょっと…離れろよ!」 「洋、会えて嬉しかったよ」 俺の背中に顔を埋めるように、安志が苦しそうに耳元でささやく。 ここ駅だし…人見てるし…なんでこんな場所で抱きしめるんだよ! もうキャパオーバーで、丈にこんな所見られたらと思うと、本当に焦ってくる。 「また会ってくれるか」 でも、そんな風に切なそうに、散々守って助けてもらった幼馴染に言われてしまうと…心がぐらついてしまう。 駄目なんだ。 安志じゃなかったんだ、俺が探していた人は… そんな酷な事は言えない。 お前は俺にとって大切な友人だから… 「俺はお前のこと幼馴染みとしか見れないよ。それでもいいのか?」 「洋…それでもいい。それ以上は望まないから、もう絶対に急に消えないでくれ!」

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