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月輪の約束 12
「うっうう…」
指輪を見て激しく動揺する洋に驚いた。
何故?
君はそんなに泣く?
私たちの間には一体何があったのか。
それを知りたくて、教えてもらいたくて気持ちが焦る。
激しく泣く洋が、自分から深い口づけをしてきた。
そして私をベッドへ押し倒す。
何を急ぐ?
こんなに積極的な洋を見たことがない。
何を焦る?
私を押し倒したあと、洋が躰の上にガバッと勢いよく重なってきた。
そしてそのまま華奢な肩を小刻みに震えさせている。
顔を私の胸に埋めているので表情が読み取れない。
「洋…?」
そっとその薄い肩を抱き寄せてやる。
「話してくれないか…洋の知っていること…思い出したことを」
「…うっうっ…丈…驚かないで…聞いてくれるか。信じてくれるか」
「あぁ話してご覧…」
「俺はいつの時代か分からないが、昔の俺をついさっき見たんだ。あの墓の前で倒れてから…今までも朧げにそいつの夢を見ていた。だけどあんなにもはっきりとは今回が初めてだった。あいつは泣いていたよ。お前を探しているようだった。そしてあいつが泣いた涙は…丈、お前が持っていたあの指輪の中を潜り抜けて行ったんだ」
洋は私の胸の上で泣きながら、倒れていた間に彷徨った世界のことを一気に話してくれた。
とても不思議な内容だ。
「もしかしてこの指輪に見覚えがあるのか?」
「あぁ…だってあいつの胸で揺れていたから」
「そうだったのか…実は私もこのネックレスに触れたとき、遠い昔の時代劇に出てくるような白いガウンのようなものを羽織って、王宮の長い廊下を歩いている自分をふっと思い出したのだ」
「えっ…本当?それはきっとあいつがいた時代だ!丈は…やっぱりあいつが探していた男の生まれ変わりなんだ!こんなことってあるのか?遠い遠い昔からのつながりだったなんて…丈と俺の関係が…」
「洋…私は朧げだが…洋の話すことは、すんなりと受け入れられる。何故だ?」
「っふ…丈…俺を抱いて。俺達は間違ってなかった。これでいいんだ。もうずっと昔から探しあっていた求め合っていた…運命だったんだよ!」
泣きじゃくりながら一生懸命話す洋を抱きしめてやる。
そして私の方から口づけしてやる。
洋が顔をあげ躰を起こしたので、私も躰を起こし向かい合うような形になり、洋の細い腰に手を回しぐっと引き寄せてやる。
「丈…ぐすっ…」
幼子のように泣きじゃくったせいで、目尻に浮かんだ今にも零れ落ちそうな大粒の涙を、そっと吸い取ってやり、乱れた黒髪を整えてやった。
そして一呼吸おいてから、洋の胸元に月輪のネックレスをかけてやった。
その瞬間、指輪は月のようにしっとりと白く仄かに輝いた。
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姉妹小説「悲しい月」春の虹~重なる月~とリンクする内容になっています。
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