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星降る宿 3

車はキラキラと輝く海岸線を走り更に森の小道を抜け、山奥の温泉宿に着いた。 ここは春に洋を連れてきたところだ。 一つ一つの客室が離れになっていて露天風呂も付いているので、誰にも邪魔されない二人きりの時間を過ごすことが出来る。 助手席で、柔らかい黒髪を風に揺らせながらすやすやと眠っている洋に声を掛ける。 「洋…起きろ」 「んっ…悪い…寝ていた?俺」 「途中からぐっすりな」 「ごめん。だって…昨夜あまり寝てないから」 「ふっ…確かにそうだな」 「ひどいな!丈のせいなのに…」 「悪かったよ」 「あっ…もう着いたの?」 「もう宿だ」 ロビーに入ると、いつもより人が多い。 お盆休み中なので、家族連れや恋人たちの旅行が多いのだろう。 そんな中、いつもの部屋が取れたのは良かった。 「しかし暑いものだな。夏本番だ」 「うん、夏バテするな」 チェックインを済ましロビーを見渡すと、新しい案内看板が出ていることに気が付いた。 【夏季限定屋外プールOPEN】 「へぇ…プールか…」 洋はどこか懐かしそうな表情を浮かべていた。 「おいで…水着を買おう」 「えっ…俺プールはあまり…いいよ」 何故か嫌がる洋を売店に連れて行き、無理矢理選ばせる。 「洋ならこのシックなのがいいか?それとも少し明るい色か?」 「丈っ!俺はプールは嫌だ!」 ぷいっと顔を背け、珍しくはっきりと断ってくる。 おそらく高校時代にでも、嫌な思い出があったのだろう。 でもいつかは克服しなくてはいけないんだよ。洋… 「分かってる」 「だったら…」 「洋…ここは宿泊客しかいないし、私がいるじゃないか」 「でも…」 「大丈夫。怖い思いはさせない」 「丈っ!あのな、俺さ…女じゃないからそんなに心配するな」 「そうだな、悪い。でも少し日焼けしろ。白い肌も綺麗だが、少し日焼けした洋も抱いてみたいよ」 「お前っ!こんな所で……いやらしいなっ」 洋は途端に頭の中でよからぬことでも想像したのか、真っ赤になってプンプン怒っている。 そんな洋が可愛いと思いながら、水着をそれぞれ購入して部屋へ移動した。 先日の海外旅行では、いろいろなことがあり過ぎた。 だからこそ今回の旅行は、楽しく何事もなく過ごせればそれでいい。 あれから月輪のネックレスを見ては、ため息をつく洋を何度か見かけた。 どうやら洋には何か隠しているような、もしくはまだ思い出していない記憶がありそうだ。 明らかにしないと解決にならないのでは…そんな気持ちが募ってしまう。 まぁそれは今回の旅行では置いておいて、まずは洋が苦手としている事を、この旅行で一つでも克服していけたらいいと思う。 「洋…怒るなよ。さぁもう部屋へ行こう」

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