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星降る宿 2
恐る恐る電話に出る。
「…父さん?どうしたの?」
「洋か」
「…はい」
「日本での生活はどうだ?慣れたか」
「はい…」
「どうして連絡をしない?それから今日から夏休みなのに何故帰国しない?」
「…すいません…」
「まだ飛行機のチケット取れるだろう、すぐに帰って来なさい」
「えっ…それは無理…」
「夏休みだ、約束通り戻って来なさい」
「…無理だ。そんな急に……」
「洋…お前は…」
「今年は帰国したばかりだし、次の長期休暇には必ず一度戻るから、だから夏休みは無理だから。もう予定入れてしまったし…ごめんなさい。電話切ります」
「洋!」
「っつ…」
電話を切っても、心臓の鼓動と冷や汗は収まらない。
父さんは怒っていた。
****
通話する洋の顔がみるみる青ざめてくる。
なんで父親と話すのに、そんなに怯える必要があるのだろう。
不思議に思っていると、洋は話の途中で無理矢理、電話を切ってしまった。
おいおい、物騒な。一体どうした?
「洋?もしかして親父さんと上手くいってないのか?」
「ん…いや…そんなことないよ…」
途端に暗い影を落とす洋が心配になる。
「何かあるのか?」
「いや…なんでもない。夏休みに帰って来いって言われて…それで」
そわそわとする洋に何か隠している素振りが見え隠れするが、それ以上のことを聞くのは酷な気がして、やめておいた。
「丈、それで何時ごろ出かける?早く出かけよう!ここには居たくない」
「あぁわかった。朝ごはん食べたら車で行こう」
「うん、そうして」
何故か逃げるように出かけたがる洋に違和感を覚えるが、いつもの温泉宿に行くのは私も楽しみだったので、その時はそれ程気にしなかった。
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