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第3章 星降る宿 1

   夢のような海外旅行から帰国し、また日常に戻った。  結局あの墓の武将が一体どういう人物だったのかは知らない。  丈は詳しく調べたいと言ったが、俺が止めた。  あの夢の男が切に望んでいたのは、生まれ変わって再会すること。  それが一番大切なことだった。  まだ他に何か大変な事が潜んでいる気配は感じていた。ひしひしと俺には伝わっていた。だが俺はそれ以上……知ることを拒んでしまった。  良くないことかもしれない……ならば逃げよう。  どこまでも丈とふたりで!  彼らの切なる願いは、俺が綺麗な躰のまま丈と結ばれたことによって、全部叶えたつもりになっていた。 **** 季節は巡り8月になっていた。 俺達の胸には今日も月輪のネックレスが揺れている。 「洋…もう起きろ」 「んっ…なんで?今日休みだろ…?」 「今日からお盆休みだ」 「あっそうか…じゃあまだ眠っていてもいいだろ?」 昨日も丈に抱き潰されたせいで、腰が痛くて起き上がれないじゃないか… べッドの中で頭まで布団を被り、昨夜の情事を思い出し赤面してしまう。 それなのに丈がカーテンを一気に開けたので、眩しくてしょうがない。 「うっ…眩しい…もう少し眠らせてくれ…」 腰が重たいので、そっと自分の手で擦っていると、丈が布団の上から手を当ててくる。 「洋。また腰痛いのか?悪かったな…」 「いつもそうやって謝る位なら、もう少し手前でやめればいいのに…」 といいつつ…俺も抱き潰されるまで激しく抱かれるのが、嫌じゃないから困ったものだ。 「じゃあ…出かけないのか?」 「何処に?」 「昨日話しただろ?」 うう…昨夜の会話の記憶が朧げなのは、全部丈のせいだ! 「何だっけ?」 「宿を予約したって言ったよな」 「えっ!そうだった?」 「いつものあの宿に泊まりに行くぞ」 「いいね!俺もあそこは好きだ。人も少ないし、落ち着く」 途端に嬉しくなって飛び起きたが、やっぱり腰がまだ痛く前かがみになっていると、丈が携帯を差し出して来た。 「何?」 「さっき携帯が鳴っていたぞ」 「そう?こんな朝から誰だろう…」 嫌な予感がして、携帯の着信履歴を見ると ー父さんー と表示されていた。 暗い顔で画面を見つめていると、丈が不思議そうに尋ねてくる。 「誰から?」 「んっ…あぁ…父から…」 「親父さん?掛けなおしてみろ。アメリカからわざわざ掛けてくるなんて、何か急用かも」 「んっ…いいよ。そのうちまたかかってくるだろう」 携帯を机に戻そうと思った途端、着信音が鳴ったので、思わず丈と顔を見合わせてしまった。 途端に心臓がきゅっと冷たくなるのを感じながら応答した。 「……もしもし?」

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