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邂逅 4
「洋、お待たせ」
勢いよくドアが開いたので抱擁しあっていた俺達は、慌ててパッと躰を離した。
「あっ……ああ」
見られたか。kaiの家でこんなことするつもりじゃなかったのに……少し気まずい。
「ははっお前たちなぁ、俺がいない隙に変なことすんなよ。まぁ早く二人になりたいよな。でも、もう少し付き合えよ」
kaiには嫌味たっぷりで言われ、赤面してしまう。
「それで……何か分かったのか」
「これを見てくれ。父に詳しく解読してもらったよ。実はあの石碑の古代文字には、緻密に暗号が隠されていて、パッと見は分からないようになっていたんだ。だが我が家にはそれを解くための手段も受け継がれていたんだ。何のためか分からない暗号の解法が、このためだったとは父も驚いてた!」
「そうなのか!凄いな! 助かる」
興奮気味にkaiは一枚の紙を机の上に置いた。それは先ほどの難解な古代文字が地図となったものだった。
「これは地図か。一体何の地図だ?」
「洋。あの古代文字はこの国のある寺院の特定の場所を示していたんだよ」
「寺院?」
「そうなんだ。暗号を解くとだな、ここから地下鉄で数駅行った所にある願恩寺という寺院にある大仏像をさしていた。そしてそこが過去と現代を結ぶ天門になっているとも書かれていたんだ」
「そうか天門の位置を示していたのか!」
「それで、kai……それがいつ起こるとか、どんな時とかヒントになるようなことは書かれていなかったか」
「うん……いつとは書かれていなかったが、ヒントになりそうなことはあったよ。酷い雷雨とその後に現れる※逆さ虹が合図と書かれていた」
「※逆さ虹?それは珍しいな。一生のうち一度見えるかどうかの吉兆と言われているのに」
丈も不思議そうに呟いた。
※逆さ虹……頭上の天頂より太陽側に凸に現れる虹色の弧が『 環天頂』アークのこと。 下に凸の虹色の弧なので『逆さ虹』という異名がある 。非常に珍しい気象現象。
kaiはさらに父親と話したことを、補足しながら伝えてくれた。
「なんでも……赤い髪の女は日本にある似たような場所からヨウ将軍の時代にタイムスリップして来たそうなので、ヨウ将軍はこの国で似たような場所を探したらしいんだ。その寺院は千年前からこの国に存在するから、確かな情報だと思う」 ※参照「悲しい月」赤い髪の女8
「そうか……その時はきっと俺には分かると思う」
****
そうか……こうやって少しずつ謎が解けていくのか。その時がいつかは分からないが、もうすぐそこまで迫って来ていると思う。今、俺の周りには、全てが整い過ぎている程だ。
kaiも現れ手紙も解読された。
丈は俺のすぐ横にいてくれる。
過去のヨウ。君が託した人たちを迎える準備は整った。
その日が来たら、きっと胸騒ぎがして分かるだろう。
雨が降り雷光が空に轟き最後に逆さ虹が現れたら、やってくる二人を俺は迎えよう。
ヨウ……君の願いと想いを繋いでいくよ。
悲しみに沈んでいた君を、今度は俺が救ってあげたいから。
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