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太陽の影 4

「洋兄さん、僕……今からそこに行ってもいいよね」  夢の中の涼は高校生の俺にそっくりな顔で微笑んでいた。とても爽やかな清らかな笑顔だったので、俺もつられて微笑んでしまう。 「涼、会いたかった。おいで……」  そう答えようと思った瞬間、辺りが当然真っ暗になった。そして下半身にあの痛みを感じた。 「いたっ……痛い」  あっ……俺は躰が無理矢理引き裂かれる、この痛みを覚えている。ここはまさか、あのホテルなのか。じゃあ……今、俺の上に乗って揺れているのは……義父だ。はぁはぁと気色悪い息遣いで、俺を揺さぶっている。  ジンジンと下半身に痛みが広がっていく。  屈辱……嫌悪感、恐怖で一杯だ。  やめろ! 涼が来る。  こんな姿っ見せたくない! 「涼っ駄目だ! 来るな。来てはいけない!」  遠くから近づく軽やかな足音に、ドアノブを回す音に心臓が止まりそうになった。 「はうっ」  次の瞬間、暗闇は突然明るい光に変わり、俺は大量の汗をかきながらベッドから飛び起きた。 「はぁ……はぁ…」  かなりうなされていたようだ。額の汗を拭いながら必死に自分を落ち着かせる。夢だ。これは夢だから大丈夫なんだ。もうあんなことは起きない。でも、夢だって分かっていたのに……あの日のことは、とっくに忘れたと思っていたのに、たまに何かの拍子にこうやって夢の中で俺を苦しめるんだ。くそっ  喉が渇いた。熱を出し切ったのか……嫌な気分とは裏腹に躰は幾分楽になっていた。  それにしても嫌な夢だった。会いたいと願う涼と思い出したくない記憶。小さな涼と会った時の俺は、まだこの身にあの苦しみを受けていなかった。だからすごく会いたいのにどんな顔で会えばいいのか躊躇してしまう。  冷蔵庫を開け冷たい水を一気に躰に流し込み、クールダウンしていると、リビングの電話がけたたましく鳴った。  こんな時間に誰だ? 「はい……」 「洋か!」  興奮した男の声に驚いた。ヒヤッとした。  相手は義父だ。なんだってこんなタイミングでかけてくる? 「……義父さん、どうしたのですか」 「洋、お前はソウルのいるのか。じゃあ……あの子は誰だ? 」 「えっ……何のこと? 」 「洋、父さんは今別荘に来ているんだよ。いつものあそこだ」 「あぁそうでしたね」 「それがなっ窓の外に洋がいるんだ! でも高校生の頃のお前の姿をしているんだ! 不思議だ。あぁ信じられない、お前はそこにいるのに、じゃああれは一体誰だ? あの子はあの頃の可愛い洋そのものだ。あぁ……今すぐ抱きしめたい」 「義父さん? 俺はソウルにいる……何を言って? 」  そこまで言ってはっとした。  まさか……高校生位の俺にそっくりって……それは、涼じゃないのか。  背筋が凍る思いだった。  何故、涼が義父さんの近くにいるのか。  駄目だ!  涼っ……近寄っては駄目なんだ。  その人には、絶対に!

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