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上弦の月 5
「見たい」
「えっ安志さんも? 」
「あぁ、洋の頑張った姿見せて欲しい」
「でも……勝手にいいのかな? 」
「洋は嫌がって見せてくれないかもしれないが、だからこそ、見てやりたい」
俺は涼の横に座り、一緒に茶色い封筒からアルバムを取り出した。
「じゃあ、見るね」
「おぅ」
ゴクリと喉がなる。
「あっ……本当に洋兄さんだ。すごく……綺麗だ」
最初は緊張して戸惑って……助けを求めるような切なげな瞳の洋が現れた。
あぁ……これはいつもの洋だ。俺だったら涼ではなく洋だと一目で気付く、切なさと儚さを含んだ憂いのあるこの目元。俺はいつだってこの目をすぐ近くで見ていた。
「こんな苦し気な表情をさせて……洋兄さんに無理させてしまった。僕のせいで」
「いや……それはどうだろう? 次の頁をめくってみろ」
こんな表情のままじゃなかった。あの時の洋は吹っ切れた様な清々しい顔をして、凛々しかった。だから確信を持てたんだ。
次の写真からは、まさにサナギが羽化して蝶になるような艶やかな洋の変身を、写真は如実に写し取っていた。洋の内面の心の変化もひしひしと伝わって来る緊張感のある写真だ。
儚げに伏せていた目がぱっと開かれ、意志を持ち、カメラを正面から見据えている。
先ほどのか弱い雰囲気は見事に消え去っていた。
強烈なまでの凛とした美しさ。
自らの手ではだけた胸元が、ドキッとするほど色っぽい。
次の写真、その次と夢中で頁をめくった。
躍動感のあるポーズ。目線……美しさが溢れ出る表情。もう目が離せなかった。そして象牙のようなしっとりとした肌が少し汗ばんで、洋には今まであまりなかった男らしい色気すらも漂ってきていた。
本当にこれはどういうことだ?
洋なのに洋じゃない。
これは一体誰だ?
そう思ってしまう程、堂々と艶やかな姿で、洋は見事にカメラに収まっていた。隣で涼も息を呑んでいた。
「すごい。これ、本当に洋兄さんなの? 信じられないよ」
「あぁ確かに洋だよ。これは……もしかしたら洋の隠れた一面なのかもしれないな」
「僕も負けていられない。そして、この洋兄さんに僕も会いたい」
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