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番外編( 安志編)『苺と君…そして満月』3
「涼、もう黙って。本当に可愛いことばかり言って」
涼を仰向けにシーツの上にそっと寝かせた。そして涼の余計な肉がついていない真っすぐに伸びた脚を左右に開かせ、その間に俺の躰を割り込ませた。それから、ぐっと力を込めて太腿を掴んで、大切な部分を露わにしていく。
「こんな格好……恥ずかしいよ」
涼の方は両腕を顔の前で交差して恥ずかしそうに顔を隠していた。俺に抱かれる時、必ずするその仕草に思わず笑みが零れた。
全く……頬を耳も赤く染めて、まるで熟した苺のようだな。
何度も躰を重ねているのに、いつまでも初心な涼の仕草に、いよいよ俺の方もブルッと震えが来てもう我慢出来なくなってくる。そろそろ限界だ。
「涼、顔見せて」
「んっ……でも」
「顔見てやりたいって言ったのは涼だろ? あ……でも明日は一限から講義があるて言っていたな」
「あっうん、だけど……中に……いいよ」
「いや、駄目だ、涼に余計な負担をかけたくないんだ」
中で出すのは確かにお互いに気持ちが良いが……涼の躰に一方的に負担をかけることにもなってしまう。
「でも……もう我慢できない……も…出ちゃう…」
喘ぎ喘ぎ……涼が苦し気に眉を寄せて呟いた。俺の腹にあたっている涼の可愛いものも、もう限界だといわばんばかりに震えて、先走りを滲ませていた。可愛く震える姿に、一緒にイキたい。今日は一緒に………そんな気持ちが込み上げてくる。
「まだだ。ちょっと待って! 」
涼には悪いが、涼の根元を片手で少し締め付けて、イクのを我慢させた。
「あっ! んっ……安志さんっ何で?」
急いでベッドサイドの棚の引き出しを開けて、薄い袋を取り出した。片手が塞がっていたので、俺は袋を口に咥え、ピッっと封を切った。
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「あぁっ!」
僕の上に跨っている安志さんが、薄明りの中、袋を口でピッと開けるその仕草に、ぞくっとした。今日は……安志さんがいつもより更に男らしく精悍に見える。
真剣な眼差し、その仕草……何もかも最高に素敵だ。僕もそうだが、安志さんも少し焦っているようだった。その切羽詰まったような表情にも、煽られてしまう。
安志さんが首を横に振った瞬間に、汗がたたきつける雨の滴のように降って来て、官能的な香りが辺りに広がった。
いつも竹のように清々しい安志さんなのに、こんなにも僕を求める欲情にかられている。その様子が、僕を刺激してやまない。
早く欲しくて……挿れて欲しくて、僕の方も、ふしだらにも腰が自然と揺れてしまう。本当にこんなに自分が淫らになってしまうなんて、安志さんと出会う前には想像も出来なかった。
「涼、もういいか」
「んっ」
返事をすると同時に腰を浮かされ、安志さんの躰と更に密着させられた。それからぐぐっと圧がかかるように、安志さんのもので僕の躰は埋め尽くされていく。
「ああっ!」
その感触が気持ち良くて、溶けていく。
僕が安志さんに
安志さんが僕に
安志さんのものを躰の内部に受け入れる時、いつも思うんだ。
僕はまだ十代だけど、僕の心はもう決まっている。
こんな風に躰を許すのは、安志さんだけだ。
この先、安志さん以外は考えられない。本当にそう思っている。
挿入が奥まで届き、また波が引くように去っては、入り口付近を細かい振動で弄られ、再び壁に擦り付けながら奥へとじわじわと侵食してくる。その繰り返しに、僕はもう翻弄されて、それでも安志さんの顔を一心に見つめながら、背中にしがみついていた。
振り落されないように、ずっとついていく。
いつものように奥へと広がる熱は得られなくても、安志さんの熱がパンッと弾けたのが、薄い膜を通した衝撃で伝わって来た。そして同時に僕のものも弾けた。安志さんの腹筋あたりに飛び散ったものは、まるで白い波の飛沫のようだった。
安志さんの躰も汗ばんでいて、僕の躰もぐっしょり濡れていた。
ふぅっと息を吐くと同時に、再びシーツの上に優しく寝かされた。
海に沈んでいくような、身を任せているような、どこか気怠くも…まどろんだ心地よい疲れを感じ、僕の瞼は重く閉じて行こうとしていた。
「涼、大丈夫か。眠くなっちゃった?」
「ん……」
「ありがとうな、凄く可愛かった」
安志さんがもう一度僕をぎゅっと抱きしめてくれたので、うっすら目を開けると、肩越しに、カーテンの隙間から夜空に浮かぶ苺月が見えた。
そうだ、今宵は※ストロベリームーンだ。この月を好きな人と一緒に見上げれば、その人と結ばれる。そんな言い伝えがあることをアメリカにいた頃から知っている。
今宵が初めてだ。生まれて初めて好きな人と見上げ、好きな人に抱かれながら見たストロベリームーンなんだ。
月のパワーが本当にあるならば……
「僕と安志さんを離さないで、ずっと一緒にいさせて欲しい」
そう願わずにはいられなかった。
安志編 『苺と君…そして満月』 了
※ストロベリームーン……夏至と満月のコラボで、赤みがかった幻想的な月が楽しめます。
アメリカでは苺の収穫時期であることから、昔から6月の満月は「ストロベリームーン」と呼ばれていました。
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志生帆 海です。
今日で『苺と君…そして満月』は了です。
超甘々な気分で書いた三話でした。
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
またこの二人の甘いお話しを書きたいと思っています。
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