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太陽と月7
なんだか……とても幸せな夢を見ていた。
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温かい陽だまりの中を、小さな俺は両親と手を繋いで歩いていた。菜の花畑が広がり、黄色と淡い黄緑の二色しかない世界。空から舞い降りる陽射しは、どこまでも明るく清らかだった。
ところが川の手前で、両親は繋いでいた俺の手をそっと離した。
「どうしたの?」
「洋、この先はパパとママだけが進む世界なの。洋が進む世界はあちらよ」
母が指さす方向には、薄暗いトンネルが見えた。
「ここ? 」
「そうよ」
覗き込んだトンネルの中は、真っ暗だった。
「やだ……暗くて怖いよ」
怖くて思わず目をギュッと瞑ると、父が優しく肩に手を置いた。
「大丈夫だ、ほら月が昇るよ」
もう一度そっと目を開くと、そこには光の筆で描いたかのような輝く満月が、ぽっかりと浮かんでいた。月光の静かな光は、真っすぐにトンネルの中を照らしていた。
「わぁ……明るい、月ってあんなに明るいの? 白く光ってすごい!」
「洋……月は、自分で光を出しているのではなく、太陽に照らされて光っているんだよ。つまり月は、太陽の光を跳ね返して輝く存在なんだよ。この先私達と別れて人生を歩んでいく洋は、まるであの月のようだ」
「……そうなの?」
別れという言葉に、幼い俺は少し怖くなった。さらに父は話を続けた。
「洋、この先何があっても忘れてはいけないよ。私たちがいなくなっても、洋は決して一人きりではない。洋の周りには太陽のような人が集まって来る。その人たちによって洋は輝きを失わない。太陽が輝くかぎり希望も輝く。その希望を洋は受け取って生きていくんだよ。分かるかな」
一陣の風。
次に目を開けた時には、もう父も母もいなかった。
でも「希望」だけは……確かに灯火のように心の中に残っていた。
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「洋兄さんってば起きて」
「洋、そろそろ起きろよ。飯冷めちゃうぞ! 」
「えっ」
躰を揺さぶられ、まどろみから目覚めると、とても明るい世界が待っていた。
「あ……涼、安志……俺、寝てた? 」
「あぁぐっすりな」
「ほら、せっかく安志さんが作ってくれたチャーハン、冷めちゃうから起きて!」
涼が可愛くポンっとベッドに飛び乗って来た。
「わっ重たい! 」
「ひどいな〜さっきは僕にくっついて寝ていたくせに」
「えっ! わっどこ触って! くすぐったい! 」
「涼っおいっ。くっつくのはこっちだろう? 」
安志の嫉妬するような焦った声。なんだか無性に楽しい気分になってきた。
明るい涼と安志は、俺にとって、まさに太陽のような存在だ。
出会えて良かった大切な人たちだ。
「うん、食べよう! 」
「おうっ洋は結婚までにもっと太れよっ」
「なっ! 」
「ははっ残すなよ」
キラキラと眩しい大事な人から受け取るエネルギーを感じた。
今日ここに来てよかった。そう思う瞬間を噛みしめた。
君たちの輝きを受け、俺ももっと輝きたい。
前向きになれる力が湧いてくるよ。
父さんと母さんの言った通りだ。
俺は一人きりではなかった。
こんなにも沢山の……俺を愛してくれる人に囲まれている。
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