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集う想い4

「涼! 何でここに? 撮影の途中じゃないのか」 「今は休憩時間なんだ。それよりSoilさん、こんな所に洋兄さん連れ出して何するつもり? 洋兄さんのこと虐めたら僕が許さないからっ」 「りょ……涼! 違うって、これは」  涼の口から出た過激な言葉に、たじろいでしまう。 「おいおい、俺がそんな悪人だとも?」 「いや……その、洋兄さんは、ほんと危なっかしくて」  冷静になって少し恥ずかしそうに俯く涼が可愛い。でも……こんな可愛い涼に心配される俺って一体……なんだか腑に落ちないな。 「ははっ涼はブラコンか」 「違うけど……」 「さぁもう上に戻ろう」 「うん、でも今ここに誰かいたような? あれは……」  キョロキョロと辺りを見回す涼に、まだどう声を掛けていいのか分からなかった。  さっきまでそこに汗水たらして必死に働く辰起くんがいたことは、まだ話さないでいいと思った。いつか涼も自分の目で見て、判断する時が来るだろう。 「そういえば、洋兄さん、アメリカではどうだったの? Soilさんの撮影も見学した?」  階段を上がりながら、涼に問われれば嘘はつけない。 「えっと……実はね、ワンシーンだけ代理で俺も参加させてもらって……」 「えっ! 嘘っ!」  涼の方がとんでもない声を出した。 「洋兄さんってば、何でそれ教えてくれなかったの? 」 「ごめん。あれはピンチヒッターだったからボツになるだろうし、わざわざ言う程のことじゃないと思って……」  縋るように陸さんを見ると、我関せずといった様子で肩を竦めていた。 「そんなことないぜ。あの写真正式に使いたいって林さんが話していたから、今度連絡が行くんじゃねえか」 「そんな……それは困るよ」  あの時は陸さんを助けたいという勢いだったから。冷静になってみると丈に相談しないであんなことして、きっと事実を知ったら怒られそうだと、無性に心配になってしまう。 「ふっ洋の彼氏が怒るか」 「えっ!」 「まぁ雑誌掲載はまだ先だから、七日に会った時に俺からも話してやるから心配するなって」 「もっとややっこしくなりそうだから遠慮するっ」 **** 「洋兄さん、じゃあまた! 次は七日になるのかな。安志さんと張り切っていくからね! 気を付けて帰ってね」 「んっありがとう。涼も撮影頑張れよ」 「陸さん、いろいろと今日はありがとうございます。待ってます」 「あぁ空も誘っていくから」  可愛い涼と陸さんに見送られてスタジオを後にした。  思い切って涼の所を訪ねてみて良かった。安志にも会えたし涼にも話せた。そして陸さんにも会えた。久しぶりに会った陸さんは、ぐっと幸せそうな表情を浮かべるようになっていた。 俺のことを見る眼も和らいでいて、ほっとした。  好きな人がいる。  自分よりも大切な人。  一緒に幸せになりたい人がいる。  幸せを分かち合いたい人がいる。  全て……  それは人を変えていく。  どんどん良い方向に。  俺もそうだけど、周りもそうだ。  今日はそれを深く理解できる時間になった。  さぁ俺ももう鎌倉へ……丈の元へ戻ろう。  夕陽に照らされるプラットホームに立つと、満たされた想いがじんわりと込み上げて来た。なんだか無性に丈に会いたい。早く会いたいよ。  間もなく到着する電車が、俺の急く気持ちを一気に運んでくれるだろう。

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