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完結後の甘い物語 『雨の悪戯 7』
ポツ……ポツ…
胸の上で抱きしめている洋の美しい背中を濡らすのは、何だ?
目線を天井へと彷徨わせると、すぐに原因がわかった。雨漏りか。どうやら古びた木造の家にさっきの雷で一気にガタが来たようだ。
「ん……何? 冷たいよ」
洋も背中をぴちゃぴちゃと濡らす水滴を不快に思ったようで、眉根を寄せながら、身じろぎした。
「どうやらここにいると濡れそうだ」
「ん……丈……これってシャワー? 俺いつの間に」
抱き潰してしまったせいで疲れ果てた洋が、まどろみながら聞いて来る。
なんとも可愛いことを。
「違うよ。天井から雨漏りしているようだ。シャワーはリフォームしたら絶対につけてやるからな」
「んっ……え? 雨漏りってこの部屋大丈夫なのか」
「どうだろう。まだこの程度だがこれ以上雨足が酷くなると」
そう言っている矢先に、今度は洋のすらりと伸びた足にも水滴が落ちだした。今度はさっきよりも大粒だ。
「うわっ」
流石に、今度は洋も飛び起きて天井を見つめた。そうこうしているうちに部屋のあちこちから水滴が垂れて来る音がする。
「あっまずい! 原稿が!」
洋は布団から飛び起きて、さっきまで着ていた浴衣を羽織ったが、途端に不快そうに顔を歪めた。
「んっ……つぅ」
洋のほっそりとした内股に流れ出て来てしまった情事の名残りに困惑しているようだ。白濁の液体が伝い降りて来る様子はとても官能的だった。
すまない。つい中に出してしまったのは私だ。
「洋、ちょっと待っていろ」
幸い部屋の近くに手洗い場だけはあったので、タオルを絞り洋の躰をざっと拭いてやった。
「丈っ……あれほどいったのに」
恥ずかしそうに俯いている洋。本当にいつまでたっても恥じらいを失わない……そういうところは、可愛いままだ。
「悪かったよ。途中まではちゃんとゴムをしていたのだが」
「全く……」
しょうがないなといった表情で、笑って許してくれるんだな、君はいつも。甘えてはいけないと思うのに、私はいつも洋のこととなるとたかが外れてしまうのだ。
「そうだ。それよりここから避難した方がいいんじゃないのか」
応急処置で雨漏りしているところに、瓶やバケツを置いてみたが……外は嵐で木造の屋根がバリバリと音を立てているし、雨戸を打ち付ける風の音も高まる一方だ。
落ちて来る水滴の音の間隔もどんどん短くなってきて、瓶からあっという間に水が溢れ出てしまった。
「そうだな。このままじゃ本当に浸水しそうだな」
「ふっ」
「何がおかしい? 」
「ん。いや……いろんなことが起こるもんだなって思って。でも丈となら怖くない」
「あぁ本当にそうだな。さぁ行くぞ」
「うんっ」
洋は大事そうに原稿が入っファイルを抱えていた。ざっと躰は拭いてやったが情事の跡が色香が濃く漂っている躰は隠しようがない。本当はこんな艶めいた姿は誰にも見せたくないのだが、非常事態だ。しょうがない。
廊下に出てみると、案の定、所々雨漏りしていた。
「うわっ! これは大々的に寺の改修が必要なんじゃないか」
「あぁ全くだな」
照明を切れたのか暗く水浸しの廊下を、洋の手を取って走り抜けた。すると廊下の向こう側から光が動き、流兄さんがパッと現れた。
見れば雨合羽を着ているものの、懐中電灯を手にずぶ濡れた。
「おーい! 二人共無事か」
「流兄さんこそ、その姿は」
「あぁ参ったよ。すっかりすぶ濡れさ。さっき雷が落ちたろう。雷が収まったので外の様子を見て来たら、お前たちの部屋の上あたりの屋根が今にも崩れそうで心配したよ」
「やっぱり。部屋はものすごい雨漏りでしたよ」
「あーやっぱりあっちの離れはそろそろ限界か。この寺でも一番古い部分だからな。ははっ俺もそうだが、二人共びしょ濡れだな、とりあえず風呂に行こう」
雨漏りだらけの廊下を歩く間に、すっかり洋も私もびしょ濡れ状態になっていた。
「夏っていっても、濡れると冷えるなぁ」
風呂場に着くと、流兄さんはポイポイっと潔く着ているものを床に脱ぎ捨てた。あっという間にパンツ一丁だ。久しぶりに見る流兄さんの背中は良く鍛えられており、36歳なんて年齢を全く感じさせない若々しく雄々しい躰だった。
全く相変わらず逞しいな。
流兄さんにはいつも敵わない。
その潔さに呆気にとられ……立ち尽くしていると……
「ん? なんだよ、恥ずかしがるなよ。男同士だろ。ここの風呂は広いから、一緒に入っちまおうぜ!いつまでそんなびしょ濡れのまま立っているつもりか」
「え……」
「ええっ!」
私よりも驚いた声を出したのは、洋の方だった!
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