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完結後の甘い物語 『蜜月旅行 42』
天空に浮かぶ月が見ていたのは、月見台の上で絡み合う二人の躰だった。
ここが温泉宿の離れだということを忘れてしまう程、お互いがお互いを求め、躰を繋げるための行為に没頭していた。
硬く尖らせた丈の舌が巧みに出入りし、奥までじっとりと濡らされると、羞恥に震えると同時に気持ち良さが溢れ、身悶えた。
「丈……もう、それ抜いてくれ……苦し…」
「洋、もう少し解してやる」
「もう……いいからっ」
丈に滅多に触れさせない部分を攻められ、耐えられず躰を揺すって嫌がってみせるが、しっかりと脚を掴まれているので、少しも動けない。
もう……丈のなすがままだ。
やっと舌が出て行ってほっとしたのもつかの間、次は指がやってきた。
「んあっ!」
濡らされた指がくちゅくちゅと卑猥な音を立てて、躰の奥を掻きまわしてくる。指の動きが連れて来る、甘美なしびれにより四肢が震えて、もう支えきれない。俺の欲望も痛いほど張り詰めて苦しくて堪らない。
「丈……丈の……顔が見たい」
「そうだな……そろそろいいな」
丈の逞しい腕によって躰をくるりと仰向けにひっくり返されたかと思うと、大きく脚を広げられて、片脚は丈の肩へと乗せられた。
丈の欲望も……これ以上ないほど膨らんでいた。
それを充分に解された場所へとあてがわれ、ぐっと力を込めてめり込まされると、反動で喉を反らしてしまった。
喉に噛みつかれながら、一気に貫かれた。
「あうっ!あっ……あっー」
途端にぎっしりと丈の太くて逞しい欲望が満ちて来る。躰の中に満ちて来る。
見上げれば、お互いに玉のような汗をかいていた。真夏の露天風呂に入り、今は月見台の上とはいえ、南国の熱風が吹き荒れる中だ。
「洋の中に挿っているな」
「あぁ……」
俺も丈の首に手をまわし躰の密着を深めると、ぐっと丈の逞しい屹立がしっかり根元までぎっしりと入ったのを感じた。
「ふぅ、これで全てだ」
「あっ」
丈の指先で入り口をすっと撫でられると、ぞくりとした震えが起きた。
「ここがこんなに薄く広がって、洋はいやらしいな」
「なっ!」
「動くぞ」
言い返すより先に躰を上下に動かされて、その言葉を呑み込んだ。
熱い!躰の外も中も熱すぎる!
躰の内側を大きく擦られて、気持ち良さに涙が滲む。
なんで……こんなに丈と躰を繋ぐことは気持ちがいいのだろう。
もう何度重ねたか分からない程なのに、飽きるということを知らない。
求め、求められる喜び。
与え、与えられる喜び。
愛している丈としか分かちあえない喜びが、ひしひしと満ちて来る。
緩やかな抽挿は、まるで海の波のよう。
月見台の上だからなのだろうか。
見上げる世界には、丈と月しか見えないからなのか。
宇宙という海を二人で泳いでいるような、そんな錯覚を覚えた。
さっきからずっと、ふわふわとした浮遊感をずっと感じている。
「気持ちいい……」
「洋、そろそろいいか」
「んっ……ん…ん」
両脚を今度は抱えられ、激しく追い上げられていく。
「あっ…んっ」
俺も、その動きに呼応するように射精感を高めていく。最後にぎりぎりまで抜いた熱を、もう一度最奥へとズンっと突かれた。
「あっ、あぁッ!!」
躰の奥深いところに白波が立ち、その波は熱く躰の奥へと広がっていった。
その感覚をじんわりと感じながら眼を閉じた俺は、震えながら、自分の欲望も一気に解き放った。
「はぁ……はぁ」
お互いの息遣いが、降りて来る。浮遊感が、安堵感に疲労感に代わり、月見台の上で二人手を繋いで空を仰ぎ見た。
「洋……最高だったよ」
「丈、すごかったな。今日はなんだか達成感みたいなの感じた。この感覚はなんだろう?」
「願いが叶った時と似ているな」
「うん、そうだな」
「ありがとう、洋」
「俺の方こそ……」
穏かな幕開け。
穏かな始まり。
蜜月旅行の意味を深く感じる逢瀬だった。
俺は幸せだ。
本当に幸せで、今、何もかも満ちている。
「丈……俺をここに連れて来てくれてありがとう」
ふと……遠い昔の洋月やヨウも、このような場所で、甘い時間を持てたような気がした。
だから目を閉じて、彼らの幸せをそっと願った。
俺が幸せなら、きっと彼らも幸せだと信じているから。
『蜜月旅行』
その意味を深く味わった。
あとがき (不要な方はスルー)
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志生帆 海です。いつもありがとうございます。「蜜月旅行」もなんと今回で42話です!翠さん流さんも巻き込んで、42話以上も楽しんでしまいました。新婚旅行らしいとびっきりのRのつもりで昨日今日と連続して濃厚に書いてみましたが、いかがでしたでしょうか。もういい加減飽きられそうですが、このまま蜜月旅行は続けていきますね!いつもリアクションをありがとうございます。更新の励みです♡
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