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番外編 安志×涼 「乾いた心」 12

 乾いた躰と乾いた心。  とにかく今の僕たちには、飢えを解消するためにお互いが必要だ。  安志さんに求められ、僕も安志さんを求め、渇きを二人で癒していく。  安志さんの背中に精一杯手を伸ばし、その腕に力を込め求めるように抱きしめた。  安志さんが嬉しそうに微笑んでくれる。それが僕も嬉しい。  安志さんの裸の胸と僕の胸をぴったりと合わせて、一つに重なり、それから再び唇も重ねた。  舌は滑らかに僕の中へやってきて、僕を愛撫する。  僕の背中を安志さんの逞しい手が辿っていく。僕も安志さんの肩甲骨をなぞるように触れていく。  長い時間キスをした。  その熱いキスによって、僕のものははっきりと屹立してしまった。もちろん安志さんもだ。 「ふっお互い限界だな」 「んっ」  長いキスをしている間……安志さんの指が僕の中へやって来てずっと蠢いていた。受け入れられるようになるまで、ゆっくりと広げられていく。一カ月ぶりなのでまた入り口が硬くなってしまったようだった。 「まるで初めてみたいに固く閉じているな……ここ」 「うっ……」  快感を生む場所があるのに、なかなか触れてもらえなくてもどかしい。 「安志さんっ……もう、お……ねがい…」 「ここ?」  突然、指がその場所を押すと甲高い声が上がってしまった。 「あ、ああぁ……」  甘い声がどんどん出て来てしまう。もう止まらないよ。 「まだだよ」  突然指がそこを離れると、僕の先端からとろりと滴が垂れた。 「なんで……? 今日は……意地悪だ」 「求めて欲しい。もっともっと」  また一番感じる部分を外した刺激を、増やされた指で受ける。もう焦れてしまう。堪え切れず僕はそっと自分を慰めようと前に手を伸ばした。 「涼、駄目だよ」  僕の手を安志さんは掴んで、頭上に固定してしまう。 「あっ……やだ…もうイキたいっ」 「ギリギリまで我慢してみて」  そう言いながら安志さんが僕の首筋に吸い付き、痕がつかないように優しく吸われた。そこはとても敏感な場所だった。 「あ……んじ、さん…」  顎がかくんと上がって、無防備にすべてをさらしてしまう。 「そろそろか」  両脚を開かれ、背中にはクッションを差し込まれた。  腰があがり、何もかも丸見えだ。  とても卑猥な姿。  でも愛し合う僕たちには関係ない。  互いに求め合う。  ただそれだけの行為に耽る。  潤滑油が丁寧に塗り込まれ、もう一度指先が潜り込み確認するようにぐるりと蠢く。腰をしっかり掴まれて、一気に挿入を受け入れることとなった。 「んっ!くっ……」  もう……何度も躰を重ねているけれども、どうしてもこの瞬間だけは慣れない。衝撃に耐えていると、耳元で唇が触れる程の距離で囁かれ、腰が震える。 「涼ありがとう。愛している」  飾らないストレートな言葉が、じんと躰に響く。 「あんじさん、僕も……僕もあなたが好き」 「嬉しいよ」  迸る安志さんの汗。  僕のものに手を絡めてくれ、適度の刺激を与えてもらう。 「イクか……」  一緒に上りつめるように誘われる。 「んっ……んっん」  その後はもう嵐のように揺らされ、ひっきりなしに啼かされて……わずか一時間とは思えないほどの濃密な時間を、味わうことになった。  互いに果てた後は、確かに僕たちの飢えは収まっていた。  乾いた心は満たされた。  でもきっとまた……すぐに乾いてしまうだろう。  その時はまた求め合えばいい。  水を吸収し植物が成長するように、僕たちの愛も育っていけばいい。 「乾いた心」了 ****   「乾いた心」は今回までですが、番外編の後日談的なものが続きます。  もう少しお付き合いください♪ 志生帆 海より

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