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夜の帳 8
今日の私は少し変だ。
寒さにやられたのか。
洋に温めて欲しいと願うなんて……
こんなことを告げるのは初めてで、自分自身に戸惑ってしまった。
私は他人に甘えることに慣れていないはずなのに、何故こんな風に洋には弱音を吐けるのか。
いや違う──慣れていないのではなく、したことがなかったのだ。
三兄弟の末っ子に生まれ、兄が二人もいるのにろくに甘えたことがなかった。
持って生まれた性格なのか、早く自立したい。早くこの家から飛び出したいと思うのが先だった。
中学から実家を離れ千葉で寮生活を始めた。医学部への進学率の高い私立一貫校に入学したからだ。
不遜な態度から先輩に目をつけられて理不尽な思いをしたこともあるが、そんなことには動じなかった。
どこか冷めた、どこか大人びた少年時代を過ごして来た。
今考えると洋と出逢うためだったのか。
ずっと洋を探していたからなのか。
傷ついた洋を救い、守る大きな翼になろうと潜在的に思っていたなら、それはきっと過去からの縁だ。
やがて時を巡り歴史を変え、月影寺に再び戻ってきた。
それからは洋と穏かな日々を紡いでいる。
同時に私と洋の関係も変わってきた。
洋は暗黒の世界から抜け出し自分を取り戻し、最近はさらに前へと進もうとしている。そんな洋に、私の方が置いてけぼりを食らったような気持ちになってしまうほどだ。
もちろん洋は私は置いて行ったりしない。
進む先は私の元だし、こうやって立ち止まり、温めてくれる存在だ。
「丈……どう?」
そんな洋は今、夢中で、私の股間に頭を埋め、熱を帯び、硬く張り詰めて嵩を増したものを、舌先を使い愛撫したり、口腔内咥え込んでくれている。
一生懸命な姿が健気で、それでいて淫靡だ。
薄い形のよい唇の隙間から、ちらちらと見える赤い舌にうっとりとする。
「上手くなったな」
洋の長めの前髪をかき上げて、清楚な整った美貌を楽しんだ。
「んっ」
洋は私の余裕のある言葉に、口淫を強めた。
洋がすべてを呑み込み、洋の舌と口腔に包まれる温かく潤んだ感触に腰が震える。気持ちいい。このままでは洋の中に放ってしまう。
「洋……駄目だ。もう離せ」
限界を告げても、洋はそのままだ。
「うっ……よせ」
しかもトドメをさすように、きゅーっと吸い上げるのだから、とうとうそのまま洋の口腔で達してしまった。
あまりの気持ち良さに、つい洋の後頭部を抑え込み、ドクドクと注ぎ込んでしまった。
どくりと脈を打つそれが、洋に嚥下されていくのを喉の動きで察した。
「洋っ飲んでしまったのか」
「ん……」
洋は少し恥ずかしそうに色香で溢れるその顔を、花のように綻ばせた。
「馬鹿、無理するな」
「温かいな。丈の」
そんな可愛いことを。
手の甲で濡れた唇を拭いながら囁く洋が可愛くて、くるっと体の位置を反転させ、今度は私が押し倒した。
「わっ!」
今度は私の番だ。ギシッとベッドを軋ませて、洋の膝へ乗り上げ下半身へと手を這わす。太腿を辿り、微かに開いた足の間へと手を割り入れ、内股の張り詰めた皮膚を撫で上げて行く。
ほろ酔い気分の洋はそれだけで、ヒクっと体を揺すった。
内股をまさぐっているうちに、洋の屹立が目立って来る。
下着ごと一気に下げ、勃起したものを直に握りしめてやった。
「うぅ……」
堪らないように目を閉じて……ふぅっと甘美な息を吐く姿に惚れ惚れする。
よくもまぁこんな綺麗な表情を……
出逢った頃は22歳。今は28歳になった洋の色香は深まるばかりだ。
私は優しい指使いで勃起した可愛いものを愛撫し、袋をもみほぐしてやる。
「あぁ! 丈……いやだっ、それ」
洋は枕から頭を落として、喉を反らした。すかさずその喉に食らいつく。
本当に自分でも呆れる程、洋の躰に溺れているのを自覚している。
ツンと尖った乳首も執拗に舐めあげてやれば、洋は更に目元を赤く染めて、喉を反らし喘ぎ続ける。
指と口で交互に乳首を愛撫し、屹立も可愛がる。
「丈……もう……もう苦しいよ。もう……挿れて」
自然と零れるおねだりの声に、嗜虐的な気持ちが奮い立つ。
洋の熱く湿った吐息が私の上半身にあたり、私も汗ばむほど高揚している。
温かい。
営みというものは本当に温かい。
体中の血が巡りだし、愛を求めだす行為だ。
そう思う瞬間だ。
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