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初心をもって 12
梅酒程度の酒に酔うなんて、らしくない。
らしくないが、酔いたかった。
たった一日も我慢できないのか。
私自身は夜勤で帰らないことも多々あるのに、自分のことは棚に上げ、洋を煽った。
洋もそんな私の天邪鬼な気持ちを察してか、言うことに従順に従ってくれる。
そんなに甘やかすな。
甘えたくなるだろう。
****
電話の向こうの洋も、いつになく乱れていた。
いつもと全く違うシチュエーションが洋を煽るのか、しどけなく和室の布団で脚を開く様子がまざまざと浮かんでくると、私の下半身も疼き出してきた。
どうせバスローブ一枚羽織っただけの姿だ。
躊躇わずに裾を開き、久しぶりに自分の雄の部分を握りしめた。
受話器越しにも感じる。
洋は濡れて、熟れて……
もう今にも弾けそうだ!
追い込んで高めて、もっともっとと煽って追い詰めていく。
私も自分の陰茎を手で輪をつくり一気に扱いていく。
「んっあっ」
洋の艶めいた声が迸る。
いつもは私の腕の中で啼く声なのに、今日は受話器越しのせいか、ひどく誇張されて聴こえてしまう。
「あっ、はっ……あぁ」
きっと魚のように今、跳ねただろう。
洋の方も、どんどんなりふり構わず乱れて行くようだ。
花が一気に咲くように色艶やかに。
「んっもっと……もっと」
私を欲しがっている。 その言葉に心を込めて返答する。
「洋、洋……愛してる」
「丈……俺も愛してる!」
ストレートな言葉に、限界近い躰が持って行かれてしまう。
頭の中で洋の肢体を思い描き、洋を抱く。
「あぁ……いい子だ。もうイッテいいぞ」
「んっはぁ……あぁあ…」
洋が弾けたのを感じると同時に、私も白濁の精を放った。
声が思わず漏れてしまうほど良かった。
「くっ」
それは遠くにいる洋を、近くに感じた瞬間だった。
しばらく洋は呆然としていたようだが、やがて受話器越しのキスを届けてくれた。
洋の想いの丈が込められたキスは、電話越しでも十分に温かかった。
とても温かく心地よかった。
すぐ横にいなくても、離れていても洋の想いを存分に感じることが出来た。
「お休みのキスをありがとう」
再び巡りあえて、本当によかった。
もう洋がすぐ隣にいなくても、怖くはない。
本当は、ずっとずっと怖かったのは私の方だ。
洋が暗闇を怖がるように、私は洋の姿が見えないと怖かった。
遠い昔の辛い別れは、いつまでもそのことを覚えているから。
近くにいても遠く感じるのは寂しいことだが……
遠くにいても近くに感じるという感覚は嬉しいものだな。
こんなにも繋がって想い合っている。
洋がいるから、しあわせを感じる。
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