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解けていく 25

「兄さん……」 「流っ、その呼び方はよせ」  椅子に座る流の脚に跨ったまま、開かれた素肌。  乳首を執拗になめられて、ゾクゾクと身体が震えた。 「兄さん……」 「いやだ」  その名は禁忌だ。  兄なのに弟にこんなことをされて、恥ずかしい。  お願いだ……せめて翠と……翠と呼んで欲しい。  そう願うと、涙がすうっと零れ落ちた。 「翠……」  その涙が僕の身体を離れる前に、流の舌が追いかけて吸い取ってくれた。 「ごめんよ。恥じらう翠が可愛くて……たまらないんだ。こんなに一人で酔って、誘うような顔をして帰宅するから妬いたんだ」 「馬鹿……僕は可愛いなんて歳じゃないし……酔ってなんかいない。これでも控えた」 「控えた? なぜ」 「それは……お前が待っているから」 「また可愛いことを。もうダメだ。我慢できない」  いきなり椅子から布団にドサッと押し倒された。  景色がぐるんと変わって、天井を見上げれば流と目があった。  そのままベルトを外され、下着ごと一気に下へと脱がされてしまう。  仰向けの状態で、流の手が僕の太股を掴んで両脚を広げていく。そして一度大きく舌舐めずりしてから、一気に僕のものをくわえ込んだ。 「うまそうだ」  僕の腰をしっかりと両手で固定して、吸い上げるように舐め上げてくる。 「あっ……」  飢えて貪るような激しさに、何もかも持っていかれる。 「はっ……あぁ……」  流は舌と唇を器用に使い分け、手では袋を揉み解していく。 「だめ……だ……耐えられない……離せ!」  気が狂いそうになるほどの快楽の波。  弟にされていると思うと、禁断の炎が燃え上がる。 「いや……だ」 「翠、出せよ。味わいたい」 「だめだ!」  必死の抵抗も流を煽るだけ。  それでも彼の口の中に発射することが躊躇われて、逃げを打つ。  そんな僕の仕草は、流を煽るだけだというのに。  執拗に吸い上げられ、やわやわと揉まれれば、あっという間に堕ちてしまう。 「あぁっ!もうっ!」  出してしまった。  とうとう……  僕の胸は大きく上下する。  恥ずかしさを噛みしめ、僕は目を閉じた。 「翠の味だ」  苦い液を飲み込んだばかりの流の口から洩れる言葉が、卑猥に闇に響く。 ****  翠の澄んだ瞳が、茫然とした中でも輝きを失わずに俺を見上げている。  翠らしい凛とした楚々とした眼差しが愛おしくて……愛おしくて溜まらない。  まだ呼吸の整わない翠の両膝を曲げさせ押し上げていく。  そして左右に開かせて、中心を露わにさせた。  じっと俺はそそり立つものを見つめる。    そこを。  男同士だ。  兄と弟だ。  そのシンボルともいえるもの。  もう何もかも乗り越える覚悟はできている。  遠い昔の悲恋。  再び兄と弟として生まれてからの険しい道のり。  すべて意味があって今がある。  ここにいる。  ここで抱き合っている。  ここに来て、昨夜あの廃屋の山荘で抱き合って、俺たちは真に結ばれた。  翠の腰を抱き上げるように持ち上げ、俺の下半身と密着させ、そのまま深く貫いていく。 「りゅ……う」  翠の……いつになく甘えた声が脳手に響き、はっとした。  くらくらと眩暈がする。 「ひっ、あっ……あ!」  翠が感じて……俺の動きに合わせて身体を揺すっている。  もっと深く!  腰を深く抱き上げて、最奥を探る。 「りゅう……もうだめ……もう……いい…気持ちいいから……」  翠が俺の元まで堕ちてきた。  翠をきつく抱きしめると、背が弓なりにしなった。 「あっ──!」  翠が弾けた瞬間に、きゅうっとそこが閉まったので俺もぶるっと震えながら迸った。  そのまま乱れたシーツの上で、挿入したまま抱き合った。 「……翠の中にいる」 「……流を感じる」 「熱いな……ひとつに溶けそうだ」 「溶けてくれ」  終わりじゃない。  俺と翠の始まりの抱擁を交わし、口づけを交わし、再び行為に及んでいく。  何度も何度も、翠を抱く。  俺のオアシス。  ずっと飢えていた。  翠は惜しまないで、与えてくれる。  何度も何度も……俺にすべてを。  ずっと憧れ続け一時は諦めて手放した兄のこの姿、この声。  俺のものになった。  やっと手に入れた。  心の底からそう思えたのは、昨夜何重にも絡まっていた糸が解けたからだ。  きっと──

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