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888話記念♡ 解けていく 28

「丈、来てくれ」  洋が私の手を引いて、ベッドルームへ誘う。  天井からのスポットライトが、まるで舞台のようにベッドを照らしている。  そして私は、洋にベッドに仰向けに押し倒される。  今宵の洋は、随分と積極的だ。  洋はそのままその細い脚を躊躇いがちに広げて、私の腹を跨いで来た。  私の服は洋によって、どんどん脱がされていく。  たどたどしい手つきの洋に、好きなようにさせてやる。  洋の方もバスローブ一枚で下着をつけていないので、その扇情的な太股の内側が見え隠れして、かなり際どい状況だ。 「洋……? どうした騎乗位は好きじゃないだろう?」 「丈を……よく見たいから」  そんな風に言いながら見下ろす洋は壮絶な色気を含んでいて、一気に煽られてしまう。 「後悔するかもしれないぞ」 「いい。それでいい……」  洋も自分の不慣れな言動に煽られたのか、しっかりと屹立していた。  もちろん私の方もこんな姿勢で洋を見上げることが滅多にないので、股間があっという間に硬くなっていくのを感じていた。  洋の腹に届きそうな程、しっかりとし屹立した私のものを、洋が自らが含んでいく。 「んっ……」  少しきつそうに眉を寄せ、微かな呻き声を呑み込みながら、必死に腰を落としてくる洋のいじらしさ。  私の心臓も……ドクドクと外に聞こえそうな程激しくなっていく。 「うっ……」 「洋、よせ……痛そうだ」 「大丈夫……もう少し」  洋の胎内に、私のものが含まれ吸い上げられるように潜っていく。  柔らかくぎゅうっと抱きしめるように、どんどん包まれていく。 「あっ……」  あまりの気持ちよさに、思わず声が漏れてしまった。  こんな風に洋の中に迎え入れられるように挿入するのは初めてだ。  戸惑いながらも、洋が本当にすべてを私に許してくれていることが伝わって、胸が熱くなる。 「大丈夫か」 「うん……ぜんぶ入った。丈のすべて……」  洋は目を細め羞恥に頬を染め、私のことを見下ろしてきた。  美しい男だと改めて感じた。  私を誘うようにゆっくり腰を揺らす様子。  長めの緩いくせ毛の黒髪がまだ乾ききっていないので、濡れて艶やかだ。  風呂上がりの清潔な香りと甘い花のような香りが混ざり合っている。  細い腰、なだらかなラインの腰。  淡い色で普段は主張しない乳首も……今は熟れた果実のように充血して、ツンと私に食べられるのを待っている。  私を呑み込みながら息を乱していく様子。  小さな喉仏が小刻みに震えている。  汗ばんだ胸。  先走りで濡れる先端。  魅惑的な唇を少し開いている。 「すべて俺の物でいいか……」 「あぁ洋しかいないからな。私には」  嬉しかった。  私は、こんなにも洋に求められている。  洋が私に飢えているのを感じ、嬉しかった。  洋が零れ落ちないように細腰を両手でしっかりと掴み、私の屹立を押し上げるように腰を突きあげると洋が呻く。乱れる。啼く。  洋も腰を揺らし、私の突き上げを迎え入れようとしてくれる。 「あっ……あ……あ」  絶頂が近いようで、洋は震えように喉奥から声を絞り出した。  その声に欲情が募り、私も洋の中で絶頂を迎えた。  洋の中に吸い込まれていく放ったものが、じわじわと二人の結合から滲み出して、湖を作る。  洋を強く抱きしめてやった。  素肌に触れたかった。 「はぁ……ん」  疲れ果てた洋を抱き留め、二人でベッドに沈み込んでいく。  スポットライトを浴びるベッドの上。  まるで私と洋の人生という舞台の上で繰り広げられる情事……  誰にも何も言わせない。  それは私たちがこの行為を恥じていないから。  やがて正気に戻った洋が恥ずかしそうに、私を見つめてくる。  今私たちはベッドで二人並んで横になっている。  同じ目線にいる。 「あ……じょう……俺……」 「洋……大丈夫か、無理したんじゃ」 「ふっお前はいつも優しいな」 「騎乗位なんて、どうした?」 「したかった……俺が丈を抱きたかった」 「……」 「丈? もしかして泣いているのか」 「え……」  言われて初めて、自分が泣いていることに気が付いた。  何故だろう。洋の言葉が心に染み入った。  急に涙が溢れていた。  洋はそのまま微笑んで私の頭を抱き寄せ、胸にかき抱いてくれた。 「俺の丈。父のような愛も、兄のような愛も……家族としての温もりも全部惜しみなく注いでくれる人だ。俺の家族になってくれてありがとう。そしていつまでも俺だけの恋人でいてくれ」  洋の言葉は、私の心の声と何一つ変わらないものだった。 「洋、嬉しいことを。私にとっても洋はかけがえのない人だ。この上なく大切な存在だ。不器用な私も、洋がいるから……父親のような愛情も、兄としての愛情も、家族としての温もりも……いろんな愛情をこの身で感じ与えられるようになった。そして一人の人を愛し抜く覚悟も喜びも……みんな洋がいるから感じられる」  洋がいるから生きている。  大袈裟かもしれないが、その位、愛おしい存在だ。  すべての謎は解けていく。  絡まった紐は、元をただせば1本の糸だった。  複雑に絡んだだけで、丁寧に優しく解いていけば、また元に戻る。  紐はまっすぐに。  私と洋の人生もこのまままっすぐに進んでいく。 「洋、この世に生まれて来てくれてありがとう」  『解けていく』了 あとがき(不要な方はスルーで) **** 志生帆 海です。こんにちは! 今日のお話で『解けていく』が終わりました。28話に渡りお付き合いいただいた上に、リアクションを送ってくださいましてありがとうございます。 すべてが更新の励み、創作の糧となっています。 そして今日の更新で『重なる月』が888話達成しました。 まさかこんなに長く連載を続けられると思っていなかったので、感無量です。 毎日いろんなことがありましたが、めげずにコツコツやってきた証。 自分を褒めたい気分なんです。 でもやっぱり一番に感謝したいのは、読んでくださった方の存在です。 ひとりでは成し遂げられなかった。本当にありがとうございます。 明日からは季節外れですが夏のバケーションの砕けた番外編を予定しています。

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