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番外編 安志&涼 『SUMMER VACATION』11

 二度目の迸りを受け入れて、僕はシーツに深く沈み込んだ。 「はぁ……はぁ……」  激しく求められて、整わない息を布団の上で吐いていた。 「涼、大丈夫か、ほら水を」  汗ばんで湿った背中を安志さんの大きな手で背さえられ、抱き起こされる。そして、水差しの水を注いでもらう。 「んっありがとう。美味しい……あの、声……大丈夫だったかな」 「あぁ、この母屋の二階には俺たちだけたって、洋が言っていたし」 「そう……よかった」 「あっそういえば……あぁぁ!」  突然、安志さんが大きな声を出して頭を抱えた。 「なに? どうしたの」 「あのパンツ! 涼に履かすの忘れた!」 「あっ……思い出しちゃった?」  あのパンツっていうのは、つまり僕のお土産の……間違いで買ってきてしまった紐パンみたいなやつのこと。 「あー約束したのに、俺としたことが」 「くすっ。そんなに見たかった?」 「うーん、あれを脱がしてみたいと思ったけどさ、今日はプールサイドの明るい所でいいものを見せてもらったしな」 「あっそういえばあの時……安志さんのここ、どうなっていたの? 水の中でよく見えなかったけど」  僕が手のひらで安志さんの股間をに触れると刺激が強かったみたいで、安志さんは呻くような声をあげた。 「ううっ……こらっ涼。触るな! 今ここはヤバイ」 「さっきは?」 「さっきもヤバかった!」 「……やっぱり」 「でも丈さんも相当やばかったぜ。シャワールームで」 「ええ!? そうなの」 「ってか男三人で狭いシャワー室で大騒ぎ。おかしかったぜ。あっあのパンツさ、洋にあげたらどうだ? 丈さんの今日の活躍は健闘賞レベルだ。ご褒美にさ」 「あっそれいいね!ふふっ洋兄さんと僕はサイズ一緒だし」 「洋は目を丸くするぞ。あいつ保守的だもんな」  屈託なく笑う安志さんに、僕もつられて笑ってしまう。  本当にこんな他愛もない会話が愛おしい。  好きな人に抱かれ、安心して眠りにつく。  こんな時間が僕が好きだ。  明後日には戻らないといけない。  モデルの世界は想像以上に過酷だから。  ライバルとの争い、妬み、嫉妬……変なグループ意識が強い集団からの嫌味。  正直辟易することもあるが、僕が選んだ道だ。  泣き言は言わない。  どんなに一方的に非難されようと、耐えて黙っている。  理不尽な思いを強いられることも多い。  でも……僕は僕の道をまっすぐ行くだけ。  それを分かってくれる人がいればいい。 「涼はいつも頑張っているな。お前まだ……二十歳にもなっていないのに、大人の中でモデルの世界で頑張っているよ。ちゃんと俺が見ているから。涼が背を正して、ぶれずにまっすぐ歩いている姿。後ろからしっかりと見守っている」  僕が安志さんに抱かれていると、耳元でそんなことを囁いてくれる。  僕が欲しかった言葉……僕に必要な言葉。  優しい海に抱かれて、眠りにつく。  そんな夜だった。    明日も一緒に過ごそう。  目が覚めたら、すぐに会える幸せを待ちわびて…… 番外編 安志&涼 『SUMMER VACATION』了 **** 夏休みの番外編。 プールで大騒動な安志&涼編はここまで♡ 次回からはメインキャラに視点を戻し、もう少し楽しい番外編を続けようと思います。 本編の時間軸(京都からお骨を持ち帰ってくるシーン)の翌年の、月影寺のお盆の様子を描いてみようと思います。現在のプールの話からの続きになります。

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