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夏休み番外編『SUMMER VACATION 2nd』14

 今宵は月が随分近くまで降りてきている。  月影寺の竹林の間から月光が漏れて、この離れを照らしている。  月光は窓ガラスを背に立つ洋を、優しく静かに包み込んでいた。  洋は、まるで月の淡い光に抱かれているように神々しかった。  人工的な明かりは敵わない。  この白い光は、なんて厳かなのか。  遠い昔、私たちはこんな月明かりの下で抱き合った。  愛の言葉を交わし、身体を交感しあった。  あの時月下に響いた月輪の音が今も耳に残り、蘇る。  愛を奏でる音だった。あれは……  その音を鳴らしたそれぞれの時代の男たちのこと。  ずっと遠い昔から、月だけは知っている。 ****  窓ガラスに押し付けた洋が、何かを堪えるように目をぎゅっと閉じた。何かを忘れたいような、何かを思い出したいような、そんな狭間に揺れる表情だ。  何故か哀しみがこみ上げて溜まらなくなって、焦らしていた洋の躰をぎゅっと抱きしめて触れた。 「丈っ……」  感極まった洋の声。  洋の手がゆっくりと背中へとまわり、私を抱きしめてくれた。 「洋がどこかにいってしまいそうで……すまない」  本当に私は馬鹿だ。  こんな風に、また洋を苛めてしまった。 「丈は昔からよくそう言うよな。こんなに長く一緒に暮らしているのに、まだ不安か」 「分かっている。もう私たちは落ち着いて、こうやって家族に受け入れられ幸せに暮らしているのに……何故だろうな」  自嘲気味に笑うと、洋は真剣な表情になった。 「おそらく月が……そういう気持ちにさせるのだろう。月は遠い昔の俺たちを知っているから。全部……全部……見ていたから」 「そうだな……まったく、洋も何か辛いことを思い出していたのか。苦しそうだった」  そう尋ねると、少しだけ悲し気に長い睫毛を揺らしたが、すぐにいつもの白百合の花が咲くような笑みを浮かべてくれた。 「いや、大丈夫だ。実は……あのソウルでのことを思い出していた。丈が月が見えるホテルの部屋の窓ガラスに俺を押し付けて抱いた日をさ。俺たちあの時から何も変わってないな。ずっと、丈も俺も……がっついているな」  洋が微笑みを浮かべた。  つられて私も浮かべた。 「ふっ……あの頃の洋を思い出す。今もそうだが、すぐに真っ赤になって恥じらってばかりで可愛かったよ」 「それはっお前があれこれ意地悪するからだ。今日だって、あっ痛っ!もうこれは取ってくれ」  二人で洋の股間を見下ろせば、ギチギチに硬くなったそれが紐パンツの前袋の中で膨れていた。根元を朱色の紐で結ばれたまま苦し気に震え、先走りで黒い前袋の生地を濡らしていた。 「……すごい姿だ。もう……こんなパンツとか紐とか信じられないよ」 「ベッドに行こう。ちゃんと抱きたい」 「またはぐらかす。どうしてこんなの買ってきたんだって聞いてるのに」  文句を言う洋をベッドへ落とし、浴衣をすべて剥いていく。 「あっ……」  相変わらずきめ細やかな白い柔肌だ。  黒い紐パンツだけのあられもない姿に、根元を結わく朱色の紐が飾りのように揺れている。 「魅力的だ。脱がすの……もったいないな」 「馬鹿言ってないで、早く……せめて紐だけでも。なっ」  自分で取ろうと思えばいつだって取れるのに、律儀に言うことを聞いてくれる洋が愛おしい。こんなに尽くしてくれる恋人はいないだろう。  可愛いことを必死に言う唇を奪いながら、まだ縛ったままの股間に手を伸ばす。 「んっ……ん……あっもう触れるなよ! くるし……」  喘ぐような声でも、気丈に訴えてくる少し生意気な口調は最初から変わらない。あの日初めて会った時から、私を捉えて離さない。  はぁはぁ……と洋の胸の上下が深くなっている。  そのまま押さえつけ指先を唾液で濡らし、蕾を広げていく。  今日はいつもより指を最初から多く差し込んで入り口を指先で広げてやると、洋がびっくりしたように目を見開いた。 「んんっ」  更に洋の唇をいつもより力を込めて吸い上げて、肩口を歯形がつくほど噛みしめる。 「あっ!」  雷に打たれたように洋が躰を反らす。  いつもの倍だ。倍の強さで洋を抱く。何故なら、これはお仕置きだからだ。 「んーもうっいやだ! 痛い……取って!」  そう叫ぶタイミングで根本の拘束を一気に解けば、ドクドクと寸前までこみ上げていたものがあふれ出た。黒いパンツの生地はぐっしょりと濡れ、横から白い液体が漏れて内腿を濡らした。 「馬鹿……こんなにして」 「抱いていいか」 「まったく……丈は」  そう言いながらも、洋は脚をそっと開いて私を自ら迎え入れてくれる。  紐パンツが濡れて気持ち悪そうなので、脱がしてやる。  しかし……想像以上に似合っていたな、このパンツ。一枚だけなくて洗い替え用にも買っておけばよかったな。  夏休みだからとかじゃなくて、普段から履かせたい。こんな際どいパンツを、ストイックに見える洋が履いているというギャップがいいのだ。 「丈……また、変なこと考えるなよ」  洋が冷たい目で見上げて来るので、苦笑してしまった。 「余裕だな。もっと乱してやる。欲情したその躰、まだ収まらないだろう」 「なっ」  洋の零したものを潤滑剤にして、ぐぐっと洋の中を窺う。 「今日はお仕置きだ。この可愛い洋の性器を、むやみやたらに人に見せた罰を与える」 「お仕置き……」  洋がその言葉をどこか恍惚とした表情で繰り返した。  洋の口からその言葉が漏れると、ひどく淫靡な雰囲気になった。  いつもの倍だ。  今日は何もかも。  私は腰を大きく揺らし動かしていく。  挿入の角度も倍深く、洋の奥に潜り込んだそれが突き上げる角度も深く。  放出した後も洋の内壁に塗り込むように腰を大きく回し、ぐるりとかき混ぜると、ぐちゅっと卑猥な水音が響いた。 「あっ……あーあぁ……」  洋は半狂乱に陥り、淫らに感じまくっていた。  酒で酔った躰は熱く、いつもより強く抱けば、いつもより敏感な反応があった。  深く強く私の愛をただその身で受け止め続けてくれた。  月は……そんな私たちのことを、ずっと……全部、見ていた。 あとがき (不要な方はスルーでご対応くださいね) **** 志生帆海です。 連日こんなエロい話ばかりですいません。 読者さまに呆れられてしまってないか、実は心配です(^_^;) しかし連日のエロシーンは体力を使いますね~ 明日で彼らの夏休み番外編はお仕舞で、明後日から新しい章に突入していきたいです。新しい章ではまた雰囲気がガラッと変わっていきます。 いつも読んでくださってありがとうございます。

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