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慈しみ深き愛 11
私は指先に全神経を集中させ、熱心に洋の下半身を愛撫した。
優しく羽のように、次は嵐に揺れる小舟のように……小刻みに強弱をつけて繰り返していく。
「あ……あっ……んっ……」
まだ布越しにしか触れていないのに、洋の吐く息がどんどん甘くなっていく。
官能的で、私の下半身にも響く。
「どうだ? しっかり感じているようだな」
洋の股間はあっという間に硬くなり、可愛い小振りのモノがきつそうにズボンの布地を押し上げていた。盛り上がった部分を手で覆い、やわやわと揉み込んでやる。
「ん……苦しい」
もう、こんなになってくれたのか。
1ヶ月前にソウルで私に抱かれてから、ずっと禁欲的に過ごしてきたのを伺させる洋の過敏な感じ方、反応の性急さに、思わず口元が綻んでしまう。
「私の手だけで……こんなに感じて」
「う……言うなよ。焦らさないでくれ……今日はあまりもたない。なぁ……丈……お願いだ」
洋も私を求めてくれている。そのことが、とても嬉しい。
洋が生まれ育った部屋で、今から洋を抱く。
以前ここで抱こうとした時は、途中で中断せざる得なかったから、これは私と洋にとって初めての挑戦になる。
過去のトラウマを思い出してしまった洋を、この場所で、このベッドで抱くことの意味。
洋が忘れたいと願い、記憶の奥底に押し込めた幼い洋と義父との辛い日々を追憶していく。上書きするために必要なのだ。
洋には誰にも相談出来ない、心の奥底に抱え込んでいる深い悩みがあるのを、ずっと感じていた。だが具体的な内容までは知ることは出来なかった。洋が話したがらないので想像の範囲で察することしか、私にはしてやれなかった。
でもこのままでは……洋がどんなに前向きになっても、前に進もうとしても、ふとした拍子に記憶が蘇り、彼を苦しめてしまう。
もっと根本から解決しないと、その繰り返しだ。そう思ったから洋自ら母親のルーツに興味を持った今がチャンスだ。
帰国してすぐ、私が連絡を取った相手は安志くんだった。
悔しいが……私と出逢うまでの洋を一番近くで見守ってくれていたのは彼だ。長い年月に渡り洋を心配してくれたのも、彼だから。
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「もしもし安志くんか」
「珍しいですね。丈さんから電話なんて」
「……実は少し会って話したいことがあってな」
「なんです?」
「その……私と出逢うまでの洋との日々を教えて欲しい」
「えっ」
意外そうな声だった。それもそうだろう。以前の私は、安志くんと洋が仲良くしているのに妬いて、洋に八つ当たりしたりと……なるべく触れたくないと思っていた。
まだ洋を抱いて間もない頃、帰りが遅い洋を心配して駅まで迎えに行ったことがあった。その時、洋が安志くんと肩を並べ楽しそうに改札を出て来た光景にショックを受けたのだ。私が知らない洋の人生を彼は沢山知っていると、見せつけられた気分で落ち込んだ。
私は22歳からの洋しか知らないのに、彼はこの世に生まれた時から洋のすぐ傍にいて、物心ついた時から洋と触れ合ってきた。
私にとっても、これはある意味トラウマなのかもしれない。とにかく、一度きちんと安志くんから、彼が知っている洋の過去を聞くべきだ。
今この時期になって、ようやく思えるようになったこと。
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