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慈しみ深き愛 28

【R18】 「本当に見えているのか! ちゃんと俺の顔が見えているか」  激しい流の激情が、矢のように突き刺さってくる。  僕がこんなに心配をかけてしまったのかと思うと、とてつもなく悲しくなった。 「流が見えないのが、どんなに恐ろしいか……僕はちゃんと分かっている」 「そうか……では翠に見てもらえないのが、どんなに辛いか……それも知っているのか」 「えっ」  一瞬何を言っているのか、理解できなかった。  すると僕の寝巻の帯を突然外され、それで突然目隠されてしまった。 「流……何を? やめろっ」  一気に視界が真っ暗になる。  恐怖で顔が引き攣り慌てて外そうとすると、その手を流に掴まれてしまった。 「嫌だ……流っ、なんで? これじゃ目が見えないのと同じじゃないか!」  帯を解きたくてジタバタ暴れるが、流が体重をかけて制されてしまう。 「翠……落ち着け、大丈夫だ。俺が傍にいる」 「あ……」  そのまま後ろに押し倒され、ドスンと布団に寝かされるや否や、僕の躰を流が一気にまさぐってくる。手は脇腹を擦り胸もなぞってくる。 「んっ……」  羽織っていたコートはどこかへ飛んで、帯を解かれた寝巻は無防備に開かれていた。見えない状態で素肌に触れられるのは、とてつもなく怖くて、恐怖に震えた。  ところが僕に触れるのが流の手だと、その大きさや厚み、質感で理解できると、恐怖よりも気持ち良さの方が増してくるから不思議だ。  やがて僕の乳首を、流が指先でキュッと摘まみ上げて来た。 「あうっ!」  背が弓なりにしなったのが、自分でもよく分かった。その背中を大きな手でぐっと支えられ、そのまま胸を突き出すような形を取らされた。素肌を触られただけでツンと尖った乳首の先端を、流が舌先でぺろりと舐めあげてきた。 「いやだっ」 「いやじゃないだろう? いいだろう? とても気持ち良さそうだ」  感じている。  その通りだ。いつもの倍以上……過敏に感じていた。  流の舌先は僕の喉を甘噛みし、そこから一気に乳首の先端へと何度も何度も滑り落ちてくる。その度に淫靡な躰がひくついてしまう。  もう僕が僕でなくなるような、淫らな気持ちで溢れそうだ。今日の流は執拗にじっくりと僕を責めてくる。 「んっ……あぁ、駄目だ。変な声が出てしまう」 「大丈夫だ。母屋までは到底聴こえない」 「無理っ……あ……んっ」  どこまでもゆっくりと愛撫されていく。いつもは獰猛なまでに激しく抱かれるのに、なんで!  目隠しで見えない分……いつもより敏感に僕の躰は流の手の動きと舌先の動きを追うように、ビクビクと痙攣するように反応していた。  見えないことは……もはや怖くはなかった。    やがて体をひっくり返されて、尻を高く持ち上げられたので、僕も自然と流を受け入れやすいように、四つん這いになった。  流の手が下肢へとすっと遠慮なく辿り出す。僕の張り詰めたものを、手の平でやわやわと揉み解してくるので、その刺激に酔いそうで息を呑んだ。 「うっ……」 「翠、ちゃんと呼吸しろ。大丈夫か」  コクコクと頷くが……流の労わるような声を聴いた途端に、僕をいつも見つめてくれる流の熱い眼差しが恋しくなってしまった。   「あっ……流の顔……み……た」  ところが最後まで言い終える前に、流の濡れそぼった圧倒的な質量が押し寄せて来て、一気に貫かれてしまった。いつの間に潤滑油を塗りたくられていたのか、びちゃっと水音をたてながら、僕の孔は流をどんどん飲み込んでいく。 「あうっ……あっ……あ、ぁ……」 「翠、すごく感じているな」 「そんなっ」  根元まで繋げられた部分で、ぐるっと弧を描くように動かれ、もうどこかおかしくなりそうだった。奥を擦られ、揺さぶられ……容赦なく突かれ、突かれまくった。ここからはさっきまでの焦らした流ではなく、獰猛な流だった。 「はぁ……あ、あ……」  腰を掴まれ、激しく何度も抜き差しされ、もう四つん這いの状態は崩れ、流の躰の一部になったように揉みくちゃに抱かれた。びちゃびちゃと卑猥な水音が茶室に広がっていく。 「もう……やだぁ……もう……これ以上はおかしくなってしまう!」 「翠、イケよっ」  後ろ手を引っ張られるように躰を持ち上げられ、最奥に一気に熱い物を穿たれた。  内股に溢れた液体が、ポタポタと伝い堕ちてきて、羞恥に震えてしまった。  僕のペニスも同時に精を放ったのか、白い蜜をドロリと垂らしているのを感じた。  躰の熱を出し切ると、猛烈に流が見たいと思った。  僕を求める流の熱い眼差しを浴びたいと!  甘い陶酔の中で、僕は気がついた。  眼が見えなくても僕は流の存在は感じられた。でも眼が見えないと、流の眼差しを僕が受け止められない。 「翠、悪かったな、目隠しなんかして……」  帯ははらりと解かれた。同時に躰を仰向けに回転され、流の胸と僕の胸がぴたりと重なるように、ぎゅっと抱きしめられた。  顔をあげると、流と至近距離で目が合ったのでほっとした。 「流……無茶をして……」 「翠悪かった。つい……我慢できなかった。分からせたくなってしまった」  流の眼は、真っ赤に染まっていた。 「馬鹿だね……ずっと泣いていたのか」 「……あぁ」  熱が籠った瞳は、涙という情熱で溢れていた。  あぁ……僕はこの瞳が好きだ。  この眼で……ずっと流に見ていてもらいたい。  さっき流が放った言葉…… 「見てもらえないことがどんなに辛いか……本当に知っているのか」  僕は自分の恐怖にばかり囚われていた。  視力が揺らいだ時、単純に僕が流を見えなくなるのが怖かった。  でも流は……僕に見てもらえなくなることが、ずっと怖かったのだ。 「あの時……月影寺に戻って来た時、僕は流を苦しめたね。流を見つめてやれなかった」 「そうだ、いつも視線が噛み合わなくて、その度に虚しかった。悲しかった。辛かった。だから俺を見つめるために、もう二度と視力を失うな!」  身をもって感じた。  目隠しされることによって、ようやく体感できたのだ。 「僕のために……分からせてくれたのか。そうか……」  流がいるから、僕は生きている。  僕は流のことを、ずっとこの眼で見つめていたい。  だから……視力はもう奪われない。    どんなに辛いことがあっても、どんなに怖いことがあっても。  流がすぐ傍にいてくれるのだから、その度に流と共に乗り越えて行けばいい。 「お前のことは、もう離さないし、絶対に離れないよ」  お前は……僕の『慈しみ深き愛』を注ぐ相手だ。 「流が……とても好きだ」  僕の方から背中に手を回し、そう告白した。 『慈しみ深き愛・了』    

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