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夏休み番外編『Let's go to the beach』1

時期外れですが、夏休みの番外編を転載します。 **** 『Let's go to the beach』  お盆休みなんてものは寺にはない。朝から晩まで檀家さんの家を巡って、毎年この時期はヘトヘトになる。 「翠、お疲れさん」 「あぁ今日はあと何軒回る?」 「あと五軒だ」 「……そう」  後部座席にもたれる翠の顔は明らかに疲労していた。もともとそんなに躰が丈夫ではない翠が、月影寺の住職を務めていくのは大変なことだと実感してしまう瞬間だ。運転手と務めるだけの俺なんかより、翠は人の家に上がって読経し法話をしたりと大変だしな。 「少し休もう。予定より早かったから、まだ次の檀家さんとの約束まで時間がある」  樹々の影が濃い路肩に車を止めて、水筒から冷えた麦茶を汲んで翠に渡す。すると翠からズシっと重たい包みを逆に受け取った。 「これ……また、いただきものだ」  翠がいつものように菓子折りの包みを俺に渡す。あーあ、またかよ。朝から四軒回ったが、どの家でもどうやら翠への貢ぎ物は欠かせないようだ。 「ふぅ参ったよ……読経するのは苦にならないが、その後の談話の時間が苦痛だよ」 「なんで? 」 「だっていつも見合い写真とセットだ。写真の方は丁重にお断りして菓子折りは持たされてしまう。申し訳ないよな」  見合い写真だと?  だがムッとして翠に気を遣わす程、子供じゃない。もう俺は…… 「まぁいいんじゃねーか。寺に戻れば甘いもの好きが控えていることだし」 「確かにそうだね。薙や洋くんが喜ぶしね」  麦茶をコクコクと飲み干す喉仏を、穴が開くほどじっと見つめてしまう。翠も俺の視線に気づいて目元を染める。 「流……そんな目で見るな。今は勤務中だ」 「分かってる。だがもう我慢の限界だぜ。八月に入ってからずっとお預けだ。もう二週間も触れさせてもらっていない」 「……流……だってそれはしょうがないだろう。お盆前は体調を整えないといけないから」  って、俺がまるでしつこい男みたいに言うんだな。いや実際にそうか。毎回翠を抱くと止まらなくなる。翠と躰を重ねて丁度一年経ったわけだが、飽きるどころか、はまりまくっている。  丈が洋くんを度々抱き潰してしまう気持ちが今なら分かるぞ。性欲は収まるどころか触れれば触れるほど増すようで、参っちまう。情事の朝、気怠い表情で横たわる翠の姿を見るのもやめられないしな。 「また流は変なこと考えて。さぁ休憩は終わりだ。車を出してくれ」 ****  今朝も朝からシャワーを浴びる羽目になった。 「まったく丈の奴……」    口では文句を呟きながらも、朝になってもう一度愛された躰を……泡立てたスポンジでゆっくりと辿ってしまう。丈からの熱い熱がそこに埋もれているようで、下半身が疼くようだ。だがそんな邪念は必死に振り払い綺麗にシャワーで洗い流して、腰にタオルを巻き脱衣場に出た。 「さっぱりしたな」  じっと鏡を見つめれば、もう頬の傷は消えていた。もしかしたら日に当たったり角度によってはまだうっすら残っているかもしれないが、もうぱっと見分からない所まで治癒した。 「あぁよかった。でも歳のせいかな。思ったより治癒に時間がかかったな」 「洋? 何をブツブツ言ってる?歳のせいだって?どれ見せて見ろ」  お盆休み中の丈が脱衣場に遠慮なく入ってきて、俺の背後に立った。  頬の切り傷跡を見ると思ったら、丈の視線は違う方へ向いていた。  つまり俺の下半身に……だ。 「何? もうしないよ」 「どうかな」  ちゃんと着替えておけばよかったと後悔するが、もう遅い。丈の手が腰のタオルの間から潜り込んできて、小さくなっていたものを誘い出し、袋ごともみあげてくるのでブルっと震えてしまう。 「あっ……もう、やめろ」 「何言ってるんだ。洋が『もう歳かな』などと言うから気になるだろう。どれ診察させてくれ」  そのまま空いている手で乳首の先端をきゅっと痛いほど摘ままれて、その刺激で屹立が固くなってしまう。  首筋に沿うように長い舌で辿られてしまうと……吐息にどうしても熱がこもってしまう。 「おい……もう、さっきしたばかりなのに」 「だが洋の……もうこんなになっているぞ」 「そっそれは丈が触るから……だ。あっ……うっ……」 「せっかく今日は一日フリーなんだ。ここに籠って続きを」 「丈は言うことが、いちいちエロいんだよ」  世間はお盆真っ最中で、翠さんと流さんは朝から檀家さんを回って仕事をしているのに、俺たちは月影寺の離れに籠って朝から晩まで、お互いの躰に耽っている。 「洋……そうか、ダメか」  懇願するように言われると断れないことを知っているくせに……意地が悪いな。 「分かったよ……俺もこんなになってしまったから、もう一度だけだぞ」 「では、今度はバスルームで」  ちゃっかりしているな、丈!  

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