「んっ……ん」 　湯舟の中にふたりで重なるように浸かるや否や、丈の手が背後から伸びてきて、昨夜から弄られまくって過敏になっている乳首をこね回された。 「あっ……丈の指の動き……いやだ」 　この手は、外科医の手のはずだ。職場では神聖な手なのに、俺に触れる時はどうしていつもこんなに妖しい動きばかりするのか。 「ん？　嫌ならやめるが」 「ずるい……」 「洋、こちらを向いて」 「何？　」 　促されるままに振り向いて丈のことを見つめると、今度はチュッとリップ音が立つキスをされた。そのまま何度も角度を変えたキスをされ続け、乳首も休むことなく弄られると……その刺激で再び俺の股間のものもゆるゆると勃ちあがってしまう。 　目聡い丈がそれを見逃すはずがない。すかさず手を湯の中に潜らせてきて、キュッと包み込むように握られてしまう。 「うっ……」 「いい硬さになってきたな。これならまだ出そうだな。洋は若いよ。まだまだ大丈夫だと証明できたな」 「何を馬鹿なことを言って……はぁ……うっ……」 　丈のゴッドハンドに巧みに擦られると、すぐに下半身が震え出してしまう。丈は相変わらず上手すぎる。 「いいぞ。もう出せ」 「あ……でも湯が」 「どうせ私と洋しか使わないだろう」 「う……ん」 　 　もう我慢できなくて、結局湯の中に白濁ものを放ってしまった。 「はぁ……はぁ」 「挿入は湯の中は辛いよな、洋は苦手だし」 　コクコクと頷くと、洗い場に四つん這いの姿にされ後ろから突かれた。 「はっうっ」 　硬いタイルの床に手をつくと、ベッドの上とはまた違う興奮が押し寄せ、気持ち良くて蕩けてしまいそうだ。 「あっ……ううっ」 　結局そのままシャワールームでも丈に抱かれ、もう限界だとふらつきながらベッドに潜り込んだ所で、玄関のインターホンが鳴った。 「はぁ……誰だ？　私たちの邪魔をするのは」 　俺に水を飲ませてくれていた丈がムスッとした様子で出ると、相手は案の定、流さんだった。ここを訪ねてくる人は流さんが一番多い。しかもいつも絶妙なタイミングで！ 「流兄さん……何です？　」 「お前なぁ、いくらお盆休みだからって、朝からずっとふたりきりで籠って」 「いいんですよ。これで」 「いやいや……洋くんにちゃんと栄養を与えているか」 「は？　」 「ほらよ、お土産」 　 　玄関先でのやりとりを俺は布団を頭まで被って聞いていた。何故なら玄関からベッドルームがチラッと見えてしまうから。抱かれた直後の顔を流さんに見せるのは恥ずかしい。もういろいろ見られてしまったとはいえ…… 「何です？　」 「檀家さんからいただいた和菓子のおすそ分けだ。翠がさ、洋くんはきっと疲れているだろうから早く食べさせてあげてくれと、しつこく言うからさ。お邪魔は重々承知で持ってきてわけだ」 「にっ兄さん声が大きいです」 「おーい洋くーん、朝から大変だな！　ちゃんと食べろよ。それから落ち着いたら母屋に遊びにおいで。午後には両親が戻って来るから」 「……えっ……あっハイ、分かりました」 　 　もう全てお見通しの上で声を掛けられたのだから、返事をしないわけにはいかない。それにご両親が戻られるって……それ聞いてない！ ＊＊＊＊ 「丈、ほら急いで」 「洋、大丈夫だよ。まだ両親は着いていない」 「全く、今日いらっしゃることを、どうして教えてくれなかったんだよ」 「言ったら……洋は朝から抱かせてくれないだろう」 「はぁ……丈って奴は本当に……」 　おすそ分けしてもらった菓子を食べるのもそこそこに、俺は慌てて身支度を整えた。何度も鏡を見て、さっきまで丈に抱かれていた痕跡が残っていないかを念入りに確認した。 「丈……俺。変じゃないか」 「あぁ今日もとても美人だ。綺麗だよ」 「そっそういう事じゃないだろ！　」 　 　はぁ……久しぶりに丈のご両親にお会いするので、緊張している俺の気持ちも察して欲しいよ。 　頬の傷治っていてよかった。あまり余計な心配かけたくないから。 「ほら洋まだか、行くぞ」 「え？　いつの間に」 　俺があれこれ考えているうちに、いつの間にか丈はパリッと洋服を着ていた。 「洋はとろいな」 「そんなことない」 　結局、丈に着替えを全て手伝ってもらう始末で苦笑してしまった。 　俺も翠さんのことを言えないな。 　丈、君がいないと何も出来なくなってしまうよ。 　すると俺の心の声が届いたのか 「洋は普段は仕事を頑張っているだろう。だから月影寺の中にいる間は私に甘えていい。それに私も洋の世話が出来ないとつまらないからな」 「丈……」 　甘やかされている自覚はある。でも丈がそれでいいと言ってくれるなら、俺も居心地がいいから甘えたい。 「丈、ありがとう。じゃあ行こう。何かいい話でもあるのかな」 「さぁ……あるとしたらまた厄介な話しかないだろうな」 「まだ宮崎のことを根にもって？　」 「あぁ持っている」 「ははっ意外と丈は根深いな」 「ははっそうだよ」 　ふたりで微笑みながら真夏の竹林を抜けて母屋に向かう。 　 　入道雲が山の間からモクモクと顔を出す夏空が、上空には広がっていた。 　空の色も山の色もみんな夏色に輝いているな。 　こんないい天気なのに……離れに籠ってばかりではもったいないな。 　俺も丈も、ちゃんと外に出て、もっと自然に触れよう。