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それぞれの想い 14

 その晩……月下美人の香りが充満する部屋で洋を抱いた。  月明かりに照らされる洋の姿態は艶めかしく、私の上で満開となり咲き誇っていた。騎乗位で私の胴を跨いで座らせ、洋の細腰を掴んで上下に揺らした。 「う……っ、いい……丈、気持ちいい」 「洋、いいか」 「んっ……溜まらないよ。もうっ」  月下美人の花が萎んでしまっても、洋は艶めかしく、何度も花を咲かせてくれた。 「丈……お前に溶けてしまいそうだ」 「私もだ……洋の中が熱くて溜まらない」  洋の中で脈打つ私のモノはますます固くなり、お互いの白濁は花の蜜のように感じた。  どこまでも厳かで艶めかしい夜だった。  何かを吹っ切れた思いで、私は全身全霊で洋を抱き続けた。 「丈と一緒に未来を描けるなんて……」  疲れ果て放心状態の洋が、天上を見つめてほろりと流した涙は、月光を浴び流れ星のように瞬いた。  ****  その日の俺たちは、求めることを止めなかった。  未明まで休んではまたを繰り返し、身体を繋げ続けた。  うとうととしながら見る夢は、俺と丈の物語のプロローグだった。  ……  夜空に浮かぶ月を見上げると、自然と濡れていく瞳。  もう……叶わない。  月を受け止める湖で  悲し気に宙を見上げて  俺はいつも泣いていた。  ただ会いたくて、ただ抱いて欲しくて。  君ともう一度……重なりたい。  思慕する心を持って、この世に生を受けた。  だが俺は、まだ何も知らない。  これから起こることも──君の存在すらも──  …… 「洋、どうした?」  裸のまま白いシーツに|贈り物《ギフト》のように包まれ、丈に抱かれていた。 「……夢を見ていたんだ」 「どんな夢を?」 「丈を探し求め、もう一度重なりたいと願う強い思念だった」  俺は自分の胸をドンっと叩いた。 「現世で……きっと、この世に生まれた時から丈を探していたんだ。思慕する心を持って生まれ変わって来た」 「洋、もう二度と別れは来ない。昨日話しただろう? 今生が最後だ。この世で寿命が尽きるまで……二人で共に生きていくと」 「……昨日の話、俺は本気だよ。俺はもうこの部屋で丈の帰りを待つだけじゃ嫌なんだ。一緒にいたい。一緒に働きたい。寝ても覚めても……いつも傍にいいたいんだ」  どうしたのだろう? 俺は渇望している……丈に傍にいて欲しいと。 「分かっている。私も同じ気持ちだ。だからもう幼子のように泣くな」 「泣いてなんか……あっ」  枕を濡らしていたのか。俺は…… 「朝が来るよ。新しい朝が……今から、見に行かないか」 「え? 由比ヶ浜にか」 「ああ待ちきれないんだ。私の新しい職場を一刻も早く見たいのだ」  

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