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託す想い、集う人 6

「あ、白江さんから連絡が来た!」  洋がポケットからスマホを取り出し、画面を嬉しそうに見つめていた。  どうやらチャット式のメッセージが届いたらしい。 「すごいな。白江さんは高齢なのに使いこなしているのか」 「そうなんだ。おばあ様から、この前突然連絡が来たんだよ」 「……そういうの私たちも見習いたいな」 「そうだね。丈……いつだって新しいことは始められるのだな。俺も病院の手伝い……ちゃんと出来るようになれるかな?」 「あぁ、洋ならきっと」 「俺……不器用だが、精一杯頑張るよ。だからご指導お願いします! 丈せんせ」  洋が美しい顔を綻ばせたので、つい見蕩れてしまった。  開業したら四六時中一緒だ。  それがとても嬉しい。  私たちはもうこれ以上、離れて過ごす必要はない。 「あ……流さん。右手の洋館でなく左手の洋館に駐車をお願いします」 「へぇ、道を挟んでお城みたいな建物が並んでいるんだな」 「左手のお屋敷が、海里先生たちの方です。そのお庭でおばあ様がお茶を飲まれているそうです」 「庭でお茶? 優雅だな。抹茶じゃないよな、この場合」    翠兄さんと流兄さんにとっては、見慣れぬ世界かもしれない。  我が家は寺なので純和風だから、白江さんたちの暮らすようなクラシカルな洋館には馴染みがない。 「すごい洋館だな。流、僕だけ和服なんて、やっぱり変だ。浮いてしまうよ」 「大丈夫だ。その姿が一番翠らしいのだから」 「そうかな?」 「今日も楚々とした佇まいが美しいよ」 「りゅ、流!」    翠兄さんの少し甘えた声とそれに反応する流兄さんの男らしく大らかな雰囲気がいい。  どうやら二人の仲も順調のようだ。 お互い足りない部分を補い合って睦み合う様子に、笑みが漏れるのも当然だ。  兄たちは……人には言えない禁断の関係だが、私と洋……そして薙は受け止めている。 「丈、前の二人は熱々だな」 「ふっ、洋の頬も火照っているぞ」  洋の卵形の美しい輪郭を手のひらで撫でてやると、やっぱり火照っていた。  すぐに顔が赤くなるのは、昔からだ。  そんな洋が愛しくて溜まらない。 「よーし。着いたぞ」 「人が沢山いるな」  確かに、雪也さんと白江さんは分かるが、雪也さんの隣の女性と、執事姿で飲み物をサーブしている人は誰だ?  皆、それなりに歳を召されているのに、華やかな上流階級の雰囲気が漂って、絵画のように美しい世界だった。 「流さん、運転ありがとうございます」 「さぁ洋が先に降りて、俺たちを紹介してくれ」 「ええ、分かりました」   洋が降り立つと一番に駆け寄って来たのは、意外なことに白江さんではなかった。雪也さんの隣に座っていた、凜とした雰囲気の美しいご婦人だった。 「ゆ……ゆうちゃん、夕ちゃんにそっくり!」  洋の母の名を呼んで……美しい瞳から涙をボロボロと零す理由を知りたい。 「あ、あの、あなたは……」 「ごめんなさい。初対面なのに取り乱して」 「いいえ。あの……もしかして母をよく知っているのですか。俺の顔、そんなに似ていますか」  洋も知りたいことが募っているのだ。 「えぇえぇ……あなたはゆうちゃんに瓜二つよ! あ……ごめんなさい。あなたは男性なのに……ずっと夕ちゃんに会いたかったから感極まってしまったわ」 「知りたいんです。俺……母が小さかった頃の話を、もっともっと」  洋の頬も紅潮していた。こんなにも一度に、洋の母を知る人と会ったことはなかったから。  そこで漸く白江さんから声がかかる。 「さぁ皆さんどうぞ。お互いに自己紹介しましょうよ!」  

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