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託す想い、集う人 7
「洋、まずは……私たちの関係を紹介するわね」
「は、はい」
なんだろう? この圧倒されるような高貴な雰囲気は。
雪也さんの息子、春馬さんも品の良い男性だったが、ここに集う人達は更に貫禄もあってすごい。
「洋、そう緊張するな」
「あ、あぁ……そうだな」
丈がさり気なくテーブルの下で手を握ってくれたので、いくらか落ち着いた。
俺を見て、涙を流してくれた女性。
俺を見て、懐かしそうにしてくれた男性。
俺を見て、優しく微笑んでくれた男性。
母さん、あなたは……こんなにも人に愛されていたのですね。
俺の記憶に残る母さんはいつも寂しそうで、いつも顔色が悪かったのに……どうして? どうして……こんなにも優しそうな人たちがいたのに、最後まで頼れなかったのか。あぁ、やはり悔やまれる。
「洋、顔色が悪いわ……大丈夫なの?」
おばあ様が心配して下さった。
「大丈夫です。あの……ぜひ皆さんの関係を教えて下さい。俺も知りたいです」
「もちろんよ。私の幼馴染み、柊一さんと海里さんのことはこの前話したわね。彼は柊一さんの十歳下の弟、冬郷雪也《とうごうゆきや》さんよ。レストラン月湖のオーナーであり、冬郷家の現在の当主。そして奥様の春子さんは、民俗学者で大学でも教えているのよ」
オーナー、当主、民俗学者?
出てくるワードが、俺とはかけ離れていて驚いてしまう。
「改めて洋くん、よろしくね。あなたに会えるなんてこの世の奇跡よ」
「君は夕さんに瓜二つだ。信じられない程濃く……彼女の血を受け継いでいるんだね。僕たちは君に会えてうれしいよ。ずっとずっと前から知っているような気がするのは、君のお母さんが幼少期から18歳になるまでを知っているからかな」
母と過ごした時間は、そんなにも長かったのか。
俺……ちゃんと受け入れてもらえている。
俺という存在を愛おしく大切な存在として……それが嬉しい。
「あの小さかったゆうちゃんがこんな立派な青年のお母さんになっていたなんて」
「夕さんの墓前に、僕たちもお墓参りしたいね」
もう母が他界しているのは知っているようで、安堵した。
「母の墓は……俺が住んでいるる月影寺にありますので、是非」
「月影寺……? その前に私の兄の紹介もさせて下さいね」
兄……?
「……はじめまして。柏木桂人《かしわぎけいと》です」
「はじめまして。洋です。桂人さんは、春子さんのお兄さんなんですね」
「えぇ」
桂人さんはとても美しい顔立ちで……あの由比ヶ浜であった瑠衣さんと面影が似ていた。桂人さんの方が硬質で神秘的だが。
「そして私は洋の祖母、月乃白江《つきのしろえ》です。孫が皆様に大変お世話になっております」
「いえ、こちらこそ、洋くんが来てくれてから和やかになり感謝しておりますよ。申し遅れましたが、僕は|張矢 翠《はりやすい》です。 北鎌倉の月影寺の住職です」
流石……翠さんだ。
凜として清廉な雰囲気は、皆を圧倒する。
ここにいる人達も一目置く、住職らしい厳かさが輝き出した。
「素敵! 只者ではない雰囲気と思ったら、ご住職さまなのね。民族学者としても興味ありますわ。『月影寺』というのは、昔の書物にも出てきますのよ」
「え? そうなんですか」
「えぇ、今度まとめてあげますね」
「それは興味深いです」
続いて流さんも挨拶する。
「俺は翠の二歳下の弟、流です。皆さんにお土産があります」
「まぁ、桜貝のアクセサリー!」
「これは鎌倉の由比ヶ浜で取れた物です。俺は月影寺の副住職兼デザイナーなので、宝飾品や着物の絵付けなど、何でもやります」
流さん、カッコイイ!
雪也さんと桂人さんには、桜貝のカフスとネクタイピン。
春子さんには、ネックレスをプレゼントしていた。
「さぁ、洋の出番だぞ」
「あ、あぁ……」
丈がタイミングを教えてくれる。
俺は社交的でないので、丈の支えが必要だ。本当に助かるよ――
「俺は白江さんの孫の洋です。そして、お……俺の……」
丈を紹介しようとした手が、ブルブルと震えてしまった。
本当に事実婚だが同性婚をしていると告げても、大丈夫なのだろうか。
雪也さんとおばあ様はともかく……あの男性はどう思うだろう?
「あぁ……震えているのね。洋、大丈夫よ。ここにいる人達は皆、とても理解があるの。ね、桂人さん」
「その通りです。さぁ……どうぞ紹介を続けて下さい」
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