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特別番外編『Happy Halloween 流&翠Ver.』

『重なる月』夜の部、お楽しみ下さい💕 ****  風呂上がりに腰にタオルを巻いた状態で浴衣を探すが、どこにも見当たらない。すると流がワクワク顔でやってきた。 「兄さん。今日はHalloweenだぞ」 「……だから?」 「なぁ、俺たちも仮装しないか」 「ん?」 「……今日はこれを着て、先に眠っていてくれ」  どんな仮装をさせられるのかと思ったら、流が風呂上がりの僕に着せたのは、ただの白いネグリジェだった。いや、でも女性用だからこれも仮装なのか。 「流、これは女性もので、足がスースーして心許ないよ」 「浴衣と大差ないって。んじゃ、後で襲いに行くから覚悟しておけよ」 「お、襲うって?」 「言葉通りさ」 流の言葉にドキドキしてしまった。  僕は流に襲われるのか。流はどんな姿で来るのだろう?  そう思うと、妙に胸が高鳴って眠れない。  やがてカタンと音がして、黒いマントが翻るのが視界の端に見えた。 「来た!」  おどろおどろしい音楽まで、わざわざ鳴らして。  ヴァンパイアの出で立ちの流に、僕はガブッと首筋を噛まれるのか。  そう思うと心臓の鼓動が、一層早くなった。 「翠、約束通り襲いにきたぜ」  はらりと掛け布団を捲られ、流の逞しい腕が僕を抱き上げた。  そのまま顎を撫でられ、口づけされ……そのまま頭を下にずらし首筋に牙を立ててくる。 「翠……俺のものになれ! さぁ……命をいただくぞ」 「あ……っ、んん」  もう片方の手でネグリジェの裾から手を差し込まれ、内股の際どい部分を撫でられている。  感じてしまうよ、流……  そんな風に触るなんて、そんな風に撫でるなんて。 「あ……噛んで……噛んでいいよ。僕を食べていいよ」  ヴァンパイアの出で立ちの流が格好良すぎて、クラクラする。  黒い瞳、長い黒髪……まるで中世の騎士のようにも見えて来て……彫りの深い顔立ちを手で撫でて、僕は目を閉じて、首筋を差し出した。 「噛むぞ」 「ん……っ」  ぽたり……  生暖かいものが皮膚に落ちてくる。  あぁ、僕は本当に噛まれて……血を流しているのか。  倒錯した気持ちに酔いしれていく。  だが……    あれ?  いや、そうではないようだ。  そもそも痛みが伴わなかったし……変だ。  もしかして、この生暖かい血は僕のものではないのか。  じゃあ……一体、どこから流れている? 「翠、悪いな。興奮して、えーっと、ティッシュはどこだ」 「りゅ、流……お前は……どうして、いつもそうなんだ~!」  鼻血をティッシュで押さえた流が、悪びれずに豪快に快活に笑う。 「はははっ、だってさ、翠のネグリジェ姿が破壊的だった」    流が僕の肩に手をかけ、一気にネグリジェを引き落とした。  肩が露わになる。  胸元まで露わになる。 「あ……よせって、汚れる」 「もう止まった」   あとはもう……ただただ、甘く抱き潰されるだけ。  僕を襲いに来た恐ろしいヴァンパイアはどこへ?  今……僕は甘い砂糖菓子になった気分だ。  流に全身を隈なく舐められて、大切な器官はぐずぐずになるまで吸われて。 「翠の身体……いつになく甘いな。甘くて……もっと欲しくなる」 「流は……狼男みたいだ……」 「ふっ、可愛い翠、まだハロウィンを引き摺って……」  寺でハロウィン?  上等だ。  それを一番実践しているのが、僕たちなのだから。  夜は長い。  僕は流に組み敷かれて、喘ぐ。  夜は深い。    僕は流を抱きしめ……「流のものだ」と囁き続けるだろう。                     Happy Halloween!  

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