1323 / 1585

特別番外編『Happy Halloween 丈&洋Ver. 』

「ようちゃん、10月31日はHalloweenよ、仮装してお菓子をもらいに来てね。期待しているわ」  そんな電話をもらったのは、一昨日だった。  さぁ困った! おばあ様が喜んでくれる仮装って、何だろう?  でも、せっかくの申し出だ。おばあさまにも楽しんでいただきたい。 「あら、洋くん、どうしたの? 何か悩んでいるの? 私で良かったら相談に乗るわよ」 「あの……お母さん、実は……」  一抹の不安を抱きながら、丈のお母さんに相談してみた。 「なるほど。もうすぐハロウィンなのね。あなたたちに似合いそうな仮装ねぇ……あ、そういえば、先日『オリオン座の怪人』というミュージカルを観に行ったのよ」 「はぁ?」 「でね、仮面の怪人が格好良くて、売店で思わず仮面を買ってしまったのよ」 「仮面ですか。カッコイイですね」  マントに白い仮面を被っている姿が思い浮かんだ。 「でしょう。これなの……使ってもいいわよね」 「いいんですか。じゃあ俺が怪人に」 「駄目よ。怪人役は、丈にさせましょう。あの無愛想な感じがミステリアスでいいのよ」 「え? じゃあ俺は?」 「そうね、洋くんは~」  ジャーンっと、あの洋服ダンスが開く。  もう、嫌な予感しかしない。 「今度はどれにする?」  お母さんのワクワク顔。  こうなってくると断れない。 「ね、どれがいい? 嫌? 駄目?」 「その、黒くてダボッとしたワンピースで」 「あらん、駄目よ。オリオン座の怪人の相手役は白いドレスよ」 「……そうでしたか」  というわけで、仮装した俺と丈は今、車で白金に向かっている。 「洋、随分と色気満載だな。その細腰を掴んで、激しく揺らしたくなるよ」 「やめろよ……っ!」 「ふっ、照れているのか。しっかり仮面を持っていろよ」 「丈は……カッコイイ役で狡い」 「ふっ、あとで洋も仮面をつけてみるか」 「いいのか」 「もちろんだ。洋にも似合うだろう」  なんて気を良くしていたのに……今度は俺の祖母がとんでもないことを言い出した。 「Happy Halloween!  Trick or Treat!」 「きゃああ、ようちゃん、すごく綺麗よ。丈さんはカッコイイわ。オリオン座の怪人になってくれたのね。大好きなミュージカルよ」 「ど、どうも……」  おばあ様は目を更に細めて、俺を見つめた。 「ようちゃんもありがとう。白いドレス、セクシーね。あのね、おばあちゃまも衣装を用意したのよ」 「今度はなんです?」 「私ね、人魚姫のミュージカルも好きなの」 「えええ?」 「まさかの人魚?」  ブラカップと、尾びれの仮装。  これは平らな胸につけるには忍びない。  困惑していると、おばあ様が次の衣装を出して来た。 「あら、気に入らなかった? 声を出せない人魚姫ってロマンチックなのに……あのね、他にもあるのよ」  出てくるのは全身タイツの黒猫に、歌手のスパンコールミニスカートの衣装に、ナース服。 「こ、これがいいです」 「結局俺が選んだのは、またナース服だった」 「まぁ、由比ヶ浜の診療所がもうオープンしたみたいよ」  いやいや。俺は女装で診療所には立ちませんから!  祖母は上機嫌、ついでに丈も上機嫌だった。 「洋、懐かしいよ。医務室で洋を抱いたな」  思い出さなくていいから! 「今日は久しぶりにそのまま抱くぞ。取れかけのナースキャップを揺らしながら、私の上に跨がっていたのを思い出した」  ナース服が、変なスイッチを押したようだ。 「じょ、丈はそのままか」 「あぁ、私はこの衣装が気に入った」 「ずるい!」 「ふっ、かっこいいの間違いだろう」  得意気に笑う丈の顔を見ていたら、気が抜けた。  まぁいいか。一年に一度くらい仮装姿で抱き合うのも……  その晩、俺は仮面をつけた丈に、散々喘がされた。  もとろん、取れかけのナースキャップを揺らしながら…… 「あ……んっ、ん」 「凄い色気だな。洋……次は人魚になってくれ」  

ともだちにシェアしよう!