1462 / 1585

新春特別番外編 雪の毛布 3

「翠、会いたかった」 「流ってば、お湯がもったいないだろう」  会いたかったって、そんな子供みたいなことを。  今日だって、ずっと一緒に過ごしていたのに。  僕はこんな風に四六時中、流に求められるのが実は嬉しかったりする。  但し、それは僕だけの秘密だ。 「翠……」  湯船に浸かっていたので、当然、僕も真っ裸なわけで、お湯の中で背後から抱きしめられると下半身に兆しを帯びてしまう。  僕だって男なので、感じる場所は流と同じだ。  隠しようがない悦びに羞恥心を覚え、サッと俯くと、流の逞しい腕が伸びてきた。  腰を両手で掴まれ、もっと来いよと密着させられる。 「あっ、まだダメだ」 「大丈夫だ。ここでは抱かない。今宵は茶室をご所望だからな」 「じゃあ、どうしてこんなに僕にくっつくんだ?」 「決まっているじゃないか。翠と離れたくない、四六時中一緒にいたいんだよ」 「流……」  それは僕の台詞だ。 「翠、ごめんな。こんなんじゃ……いつか翠に愛想を尽かされちまうかもな」  流のトーンが下がる。  その自嘲的な台詞に、僕は首を横に振った。 「違う!」 「違うって?」 「同じなんだ」 「同じって?」 「僕も四六時中、流と離れたくない」  切なる願いは、遠い昔の湖翠さんのものか。  否、違う!  僕自身から湧き起こる流への果てしない欲情だ。 「翠、本当か! 俺だけじゃないのか」 「全く……流は僕の秘密を暴く名人だな」 「そんな秘密、一人で抱えるな。それは分かち合うものだ」  唇で首筋をじっくりと辿られる。 「あっ、うっ」 「誓うか。意地を張らないと」 「流……っ」  薄い胸を大きく掴まれ、揉まれる。 「あっ……あっ……」  僕の心を鷲掴みにする流が、好きだ。   今度はくるりと反転させられ、だいぶ薄くなった手術痕に舌を這わされた。 「誓う……誓うよ。流は僕のすべてだ」 「よく言えたな。行こう!」  そのまま湯船から抱きかかえられ、大きなバスタオルで包まれたまま茶室へ運ばれた。  こんな姿は、誰にも見せない。  流にだけだ。  流になら全てを曝け出せ、全てを許せる。 「翠、今年も綺麗だ」  飾らない賛辞に射貫かれ、頬に朱が差すのを感じた。 「寒くないか、よく暖めておいたつもりだが」 「少しだけ……寒い」 「よし、すぐに暖めてやるよ。ちょっと待ってろ」  カタンと雪見障子が上がる音がした。  雪明かりが、音もなく忍び込んでくる。  僕たちだけの世界に。 「雪ならば、いいだろう? 翠の躰を見せても、俺に抱かれる翠を見せても」  そこからは数え切れない程の口づけを浴びた。  雪明りを頼りに、お互いの身体を手で確かめあった。  流の肩、背、腕。  逞しい躰が愛おしく身を擦り寄せると、腰を抱かれ密着を深められた。 「翠、横を向けよ。まだ雪が降っているぞ」  流の視線を辿ると、しんしんと降り積もる白雪が、雪見障子の硝子の向こうに見えた。 「音がしないから、もうやんだのかと思った」 「俺の愛も同じだ。音もなく、いつだって翠に降り積もっている」 「雪に埋もれそうだね」と肩を小さく揺らして笑うと、流が僕の躰を舌で辿りだした。 「あっ……」 「大丈夫だ。いつも、こうやって溶かしてやる」 「あぁ……っ、蕩けそうだ」 「それでいい、委ねろ」 「熱くなってきた」 あとがき(不要な方は飛ばして下さい) **** 昨日までとガラリと雰囲気を変えて、今日は濃厚な雰囲気でしたね。 翠&流がお好きと言って下さる方へのお年賀です🎍💕 いろんな彼等を、今年もお見せしたいです。 お正月特別SSもう少し書かせて下さいね! スターやスタンプ励みになっています。 ありがとうございます。    

ともだちにシェアしよう!