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君を抱く 1

私は部屋に戻り、音楽を聴きながら壁にもたれていた。 座っていられない気分だった。 冷静になれ落ち着け …一体この感情はなんだ。 寝ている洋に口づけをするなんて、私も意思の弱いただの男だな。 目を瞑り心を休ませていると 、ドアを小さくノックする音が響いた。 えっ!洋が何故? 「どうぞ…」 そこには真っ白なシャツに着替えた洋が俯いて立っていた。 「どうした?目が覚めたのか?」 「…んっ…その…あの…」 「具合でも悪いのか?」 びしょ濡れのまま眠っていた姿を思い出し 、私は慌てて洋に近寄り額に手を当てた。 「熱はないな」 「あ…あの」 ますます俯いていく洋の顔を覗き込むと 、耳がみるみる赤くなっていく。 「洋?」 不審に思って額にもう一度手を当てると、洋の華奢な指がその上に重なった。 「丈…俺は…」 何かを決心したような 洋の思いつめた表情に不安が増す 。 「一体どうしたんだ…」 「……」 その瞬間のことだった。 ふわりと洋の躰が私の躰と重なった 。 「えっ!」 洋の肩は小刻みに震えている。 そして洋の手が俺の背中へと遠慮がちに恐る恐るまわってくる。 「…丈は俺のこと…」 そこまで言って言い淀んでいる。 その先は…なんだ… 「…丈…さっき俺にキスした?」 「え!」 気が付いていたのか。 ここで認めないわけにはいかない。だから意を決して答える 。 「あぁ」 「何故?」 「……」 もうすべて話してしまおうか… このまま洋に距離を置かれることになっても 、もうこの感情を我慢できない。 そう思い私も洋の背中に手をまわし 、ぎゅっと力を込め抱きしめてから 一気に想いを伝える。 「どうやら私はお前のことが好きらしい。 好きな女に触れるのと同じように洋の躰にもっと触れたい…ひとつになりたい…そう思う気持ちが止められなくなってきている。だから思わずキスしてしまった。許してくれ。」 抱きしめている洋の肩がびくっと一瞬震えたが、私の腕から逃げることなく背にまわす手に力が込められたのを感じた。 暫しの沈黙の後 、消え入るような小さな声だったが確かな意思を持った声で 、洋が応えてくれた。 「丈……俺も丈のこと…好きだ…気になっている」 さらにもっともっと小さな声で 「丈になら……抱かれてもいい…」 「洋! 」 その言葉で躰中の血か一気に沸き立つのを感じた。 理性というものはこんなにも簡単に吹き飛ぶものなのか。 冷静沈着と言われ続けていた自分なのに、信じられないほど欲情していた。 そのまま抱きしめている洋の脚を担ぎ、横抱きの状態でベッドへ連れて行き、そっと寝かせると、まっすぐな瞳で洋は私のことを見上げた。 顔を赤く染め堪らなく恥ずかしそうな表情を浮かべてはいるが、逃げる様子もなく、見つめている。 「洋、いいのか…?本当に?」
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