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雨に濡れて 14
あっ……丈の唇が俺の頬に触れた。
本当はベッドに降ろされた瞬間に目覚めていた。ソファでの口づけは夢か現実か分からないほどあやふやなものだったが 、今もう一度ベッドで頬にそっと触れていった唇の温かさは確かだった。
丈……このまま行ってしまうのか 。
俺はどうしたいのか……
丈は迷っている 。
俺も迷っている 。
でも確かなのは嫌じゃなかったということ 。むしろ心地良かったということ 。丈に触れられると何故だかふんわりと甘く切ない気持ちが込み上げて来るよ。
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部屋のドアが閉まる音と共に、俺はむくりと起きあがり冷静に考えた。
丈は俺に手を出していいのか迷っている。紳士的な彼のことだ。きっと葛藤しているのだろう。 俺だってあんなに触れられるのが嫌だった同性の男にキスされて大丈夫なんて信じられない。 しかも丈だったら……彼にならもっと触れてもらいたいと思うなんて……
この高鳴る気持ち、一体何なんだろう。
まるでこうなる運命だった。
そんな出逢いってあるのか。
相手は俺と同じ男なのに……
ため息と共に部屋の時計を見ると、まだ21時だ。
俺はスゥっと深呼吸してから目を閉じ、頭の中をクリアにしていった。
空っぽの頭に残る気持ちは何だろう。それを知りたい。
冷静になれ。
目を瞑ると脳裏に浮かぶのは温かみのある頼もしい丈の優しい眼差し だった。その記憶に手を伸ばせば、丈の男らしい香りが漂ってくるようだ。もうそれだけで胸が締め付けられるよ。
今、ここで俺は決心した。
丈になら抱かれてもいい、丈になら抱いてもらいたいと 。
バスローブを脱ぎ捨て、真っ白なシャツとズボンに着替え、丈の部屋へと向かった。緊張で足がカタカタと小刻みに震えているのが分かる。
だが、この一歩……これは自分で決めたものだ。
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