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第2章 二人きりの旅 1
洋を初めて抱いた日から、私は月のように儚げな洋をこの腕の中に閉じ込めたい、繋ぎ留めたい、そんな気持ちで溢れかえっている。だから毎晩のように彼の躰を求め、抱き続けていた。
だが洋のことを壊れそうになるほどしっかりと抱きしめているのに、幾ら求めても何かが足りない不安な気持ちばかり募っていた。
何故だろう?
まるで長い年月……洋に飢えていたかのようだ。
そんな私の気持ちに寄り添うように、洋は私の望むままに、その躰を差し出してくれた。すべてを委ねてくれるそんな洋に甘え、欲情し続けていた。
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「洋は明後日まで休みだろう?近場の温泉にでも行ってみないか」
「丈……いいのか。温泉なんて久しぶりだ。うれしいよ」
お互い休暇が取れたので温泉宿に行くことを提案してみた。最近どことなく沈みがちの洋の気分を変えてあげたくなったのだ。ふと一人でいる洋を見ると、何処か遠くを見つめ寂しげにしている事があるのが気がかりだった。
こうやって嬉しそうに明るい表情を浮かべる洋を目の当たりにすると、ようやく私も笑顔を作れた。
やってきた温泉宿は離れの一室でとても静かな空間だった。そこには二人きりの時間があった。窓の外には暖かな日差しがキラキラと輝いて見えていた。
「丈!景色が凄くいいね!後で外を歩いてみないか」
にっこりと微笑みながら、窓の外を眺めている洋の声は明るく澄んでいた。私に抱かれた日から洋はますます心を許してくれ、甘い笑顔を沢山見せてくれるようになっていた。もしかしたら本来はこういう性格なのかもしれない。
最近は七歳も年下の洋の明るい雰囲気につられて、笑う自分自身にも驚いている。
ここ数年は何をしても面白くなく、研究職という仕事柄一人で籠ることが多かった。そうしているうちに人と接するのがだんだん面倒になってきて、笑うことを忘れていたのに……。洋のおかげで私も変化してきている。そのことが嬉しくて、私は窓の外を眺めている洋の躰に腕をまわし、きゅっと抱きしめてやった。
「洋……その前に温泉はどうだ?」
「んっそうだね」
「この部屋には専用の露天風呂がついているんだよ」
「えっ……そうなのか」
途端に顔を耳まで赤く染める可愛い洋になっていく。
私は彼のこんな表情をもっと見たくて、つい意地悪をしたくなる。
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