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二人きりの旅 3

 トクン──  心臓の高鳴る音が丈に聴こえてしまいそうで、その胸に背を預けるのが憚られる。 「洋……二人きりだな。ここでは」 「そうだな。ここはとても静かだ」  鳥のさえずりだけが聴こえる俺たちだけの空間だ。ふとこの数週間の満ち足りた夢のような日々を思い出した。  丈に抱かれてから……抱かれる度に凍っていた心が解け、この湯のように暖かい気持ちでどんどん満ちている。本当に不思議だ。  だが丈の胸に躰を預けお湯に浸かっていると、やはり恥ずかしい。ここは明るいし貸し切りとはいえ屋外だ。誰かに見られないか心配で、もぞもぞと落ち着かない。 「どうした?居心地が悪いのか」  切れ長の漆黒の瞳に覗かれて、ちょっとムッとした。なんだって丈はそんなに余裕なんだ?俺はこんなにも落ち着かないのに。 「もう上がるよ。このままだと逆上せるから」 「駄目だ。もう少しここにいろ」  無視して彼を押しのけ風呂から出ようとすると、丈は俺の腰をぐいっと引き寄せ股間に遠慮なく触れてきた。更に背後には丈の熱いものがはっきりあたるのを感じ、途端に電流が走ったように体が熱くなり疼きだしてしまった。 「あっ駄目……ここじゃ嫌だ!」  慌てて身を捩ってお湯から逃げようとするが、腰をしっかりと抑えられていて動けないよ。 「んっ……んっ」  声が出ないように唇を噛みしめるが、我慢しても丈の手の刺激があまりに気持ち良くて漏れ出してしまう。 「あっ……丈っ」  俺はどうして……どうなってしまったのか。丈のすることなら何でも受け入れたくなるのは何故なのか。  丈と結ばれた時に『過去からの願いが叶った』『過去からの呪縛から解き放たれた』ような、なんとも表現しがたい満ち足りた気持ちが溢れだした。だから丈のためにだったら、彼が望むことだったら、何でもしてあげたいとさえ思う始末だ。 「んっ」  刺激が一層強くなる。気持ち良さと恥ずかしさが入り混ざる。未だ丈は手を止めてくれない。 「も……我慢できなくなる。部屋に戻りたい」 「ここでは嫌か」 「こんな所でヤルのは慣れていないから。お願いだ……」  刺激が強すぎて涙目になりながら必死で訴えると、丈は少し困ったような表情をして 「洋……分かったよ。その代り部屋では好きなだけ抱くが、いいか」 「えっそんな……」

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