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虹の彼方 1
良かった……今日は外に出かけられるのか。
実は俺の身体は相当疲れているようだ。昨夜丈が俺を深く愛してくれた代償で、腰が重いし鈍く痛くて……今日はもう君を迎え入れる自信がないのが本音だ。
しかも身体がこんなにボロボロになるまで、あんなに警戒していた同性の男に抱かれてしまうなんて、一体どういう心境の変化なのか。
本当に丈だけは特別だ。君以外の男が触れると、未だに吐き気がし鳥肌が立つのだから。
ふぅと安堵の溜息をつきながら洋服に着替えようとした時、鏡を見て絶句した。
「首筋だけかと思ったら全身にキスマークか。はぁ全く丈の奴、何てことを」
昨日は丈があまりに激しく抱き続けるので意識が朦朧とし、最後の方はよく覚えていない。それをいいことに全身にお前の痕を残すなんて……これじゃ本当に出かけられないじゃないか。せっかく旅行に来たのに。
愛撫の痕を指でそっと触れてみると、昨夜のことが思い出され恥ずかしい気持ちになる。こんなところにまで愛してもらったのか。でもやっぱり丈の奴いやらしいな。俺は女じゃあるまいし他人が見たらどう思うか、この服じゃまずい。
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支度が遅いので部屋を覗くと、また洋の表情が曇っていた。
「怒っているのか」
そっと近寄り後ろから洋の華奢な腰に手をまわし、抱きしめた。
「悪かったよ、こんなにして。洋がどこかへ行ってしまうのではないかと不安なんだ。それでついこんなに……洋がたまに見せる不安そうな顔が心配で、私を置いてどこかに行ってしまいそうで」
「そんなことを考えていたのか」
意外そうな表情で、洋は私を見つめた。濡れたような漆黒の瞳は、静かに澄んでいた。
「私は洋の喜びも悲しみもすべて受け止めたいともがいているよ。そんな気持ちが込み上げてきて、この数日間必要以上に激しく抱いてしまった。どうか許してくれ」
「……丈は心配性だな。俺はどこにも行かない。それに他に行くところなんてないよ。丈と一緒にいると安らぐよ。俺の悲しみはお前といると癒されるのだから、許すも何も……」
心の底から詫びると、洋はそっと私に手を重ねて、いつもの優しい笑顔を見せてくれた。
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