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虹の彼方 1

良かった。今日は外に出かけるのか。 実は俺の身体は相当疲れているようだ。 昨夜丈が俺を深く愛してくれた代償で、腰が重いし、鈍く痛い。 今日はもうお前を迎え入れる自信がないのが、本音だ。 しかも身体がこんなにぼろぼろになるまで、あんなに警戒していた同性の男に抱かれた俺。 一体どういう心境の変化なのか? とにかく丈お前だけは特別だ。 お前以外の奴が触れると、未だに吐き気がして鳥肌が立つのだから。 ふぅっと安堵の溜息をつきながら浴衣を着替えようとした時、鏡を見て絶句した。 「首筋だけかと思ったら全身にキスマーク。はぁ…全く丈の奴は、なんてことをするんだ。」 昨晩の俺は、丈があまりに激しく抱き続けるので少し意識が朦朧としてしまい、最後の方はよく覚えていない。それをいいことに、こんなに全身にお前の跡を残すなんて、これじゃ本当に出かけられないじゃないか。せっかく旅行に来たのに。 それでも… 愛撫の跡を指でそっと触れてみると、昨夜のことが思い出され恥ずかしい気持ちになる。 こんなところにまで…丈の奴いやらしいな。 しかし俺は女じゃあるまいし他人が見たらどう思うか…この服じゃまずいな。 **** 支度が遅いので部屋を覗くと、また表情が曇っている洋がいた。 「怒っているのか」 そっと近寄り後ろから洋の華奢な腰に手をまわし抱きしめた。 「悪かった、こんなにして。洋がどこかへ飛んで行ってしまうのではないかと、いつも不安だ。それでつい…こんなに。洋がたまに見せる不安そうな顔が心配で…私を置いてどこかに行ってしまいそうで」 「そんな…」 意外そうに洋が私のことを見つめてくる。 「私は洋の喜びも悲しみもすべて受け止めたいともがいているのだ。そんな気持ちが込み上げてきて、この数日間必要以上に激しく抱いたりした。許してくれ」 「丈は心配性だな。俺はどこへも行かない。それにお前以外に行くところなんてない。 お前と一緒にいると安らぐ…俺の悲しみもお前といると癒されるのだから…」 心の底から詫びると洋はそっと手を重ねて、いつもの優しい笑顔を見せてくれた。
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