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あの日から 3

「洋…相変わらずだな」 「安志っ」 安志は高校時代よりずっと大人っぽくなっていた。 当時は野球部に入っていて短くしていた髪の毛も少し伸びて…印象が変わっていた。 前より背がまた伸びた? でも、人懐っこい笑顔は変わらないな。 「…久しぶりだな…」 「うん…」 「洋…少し話せるか?」 「ああ…俺もそう思ってた」 「まさかこんな飲み会で再会するとはな。しかし気を付けろよ。またこんな目に遭って懲りないな。」 嘆くように言われ、急に恥ずかしくなる。 「ごめん。あと…ありがとう」 「違う店に行くか」 「あぁ…」 丈に帰宅が遅くなることを連絡していないことが気になったが、何しろ5年ぶりの再会に俺は浮かれてしまった。 あんな別れ方をしたが、アメリカでもよく思い出していた幼馴染の安志に偶然会えて、本当に嬉しかった。 安志の後について静かなジャズが流れるバーへ移動すると、中はさっきまでの喧噪が嘘のように落ち着いた空間でほっとした。 やっぱり俺は騒がしい飲み会、苦手だな… 二人でカクテルで乾杯しながら少しずつ互いのことを話出す。 「あれから5年か…お前が急に消えてしまって…」 「…ごめん。親の転勤が急に決まってバタバタして…そのまま渡米して…」 「ふっ…謝るな。俺が全部悪いんだ。あの日あんなこと言って…まだ覚えているか?」 「…」 コクリ 小さく頷いたきり会話がなくなった。 隣りに座っている安志が俺のことをまっすぐ真剣な表情で見つめるのが気まずくて、手元のカクテルを一気に飲み干すと、途端に顔がかーっと熱くなってきた。 「おいっ!飲みすぎだぞ。大丈夫か」 安志に久しぶりに会えた嬉しさとあの日のことを掘り返される気まずさが混ざり合って、ずっと緊張していた俺は一気に酔いが回ってきてしまった。 「…覚えてる…」 「そっか…俺はずっと後悔してた。あんなタイミングで言うべきじゃなかったし、一生言わなければよかったとも。まさかあれっきりお前が消えてしまうなんて思わなくて…」 「…そうか…俺も気になっていたんだけど…ずっと連絡出来なくてごめん…」 「なんで連絡しなかった?」 「何故って…」 「いいから話せよ。何言われても傷つかないよ」 「…だって、俺にとって安志は大事な幼馴染で…でもそれ以上の関係は想像できなかったから…俺、どんな顔して安志に会えばいいのか分からなくなって…」 「ん…分かってるよ。洋」 「…ごめん」 「…もちろん今もただの幼馴染だよな?」 息を呑んだ。 小さく慎重にでも期待させる言葉はなく、素直に答えるしかなかった。 「…うん…本当にごめん」 安志は一瞬暗い表情をし、それから気持ちを切り替えるようにグラスのお酒を一気に飲みほした。 「それで…アメリカからいつ帰国したんだ?」 「あっ…就職が決まって…それで4月に」 「へぇ~もうアメリカから戻らないと思ってたよ。親父さんはまだあっちだろ。」 「あぁ、父はまだ向こうにいるよ」 「今、どこに住んでる?前の家は空き家のままだろう」 ドキッとする。 突然丈のことを思い出した。 まさか俺が男と二人で住んでいるなんて、安志には言えないし言いたくない。 丈との関係や一緒に住んでいることは誰にも話したくない。触れられたくない。 何故だか、隠し通さなくてはいけないような気がしていた。 絶対に周囲にばれてはいけない。 そんなシグナルが丈に抱かれてからずっと付きまとう。 話を逸らしてくてお代わりしたカクテルを飲み続けていると、次第に意識が朦朧として急激な眠気に襲われてしまった。 「おい…洋?起きてる?」 「安志…飲みすぎたかも…気持ち悪い」 「お前なぁ…あぁ寝るなよ。無防備だぞ!」 「…安志なら大丈夫だろ?」 そのまま、安志の肩にもたれるように眠ってしまった。
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